抄録 |
【目的】食道扁平上皮癌(SCC)に対するESD+α療法の長期成績を明らかにすること.【方法】2000年1月から2008年3月に食道SCCにESDを施行した218例247病変を対象とした.年齢68歳(42-91),病変部位Ce/Ut/Mt/Lt/Ae:4/21/160/52/10,肉眼型0-I/0-IIa/0-IIb/0-IIc:4/19/22/202,観察期間70ヶ月(4-152ヶ月),腫瘍長径23mm(1-85mm),深達度EP/LPM/MM/SM1/SM2:78/113/34/13/9.+αの治療:MM-SM1でly陽性例には外科治療,化学放射線療法(CRT),または放射線治療(RT)を勧めた.Follow upは原則としてEP-LPMでは年に1回のEGDとCT,MM以深では年2回CT,SM2またはly陽性例は年2回EUSを施行した.予後調査:通院不可能例は紹介医へ確認,本人へ直接連絡等を行い,予後判明率100%であった.【成績】1.局所再発率は0%であった.2.追加治療と予後・EP/LPM群191例:全例がly陰性で追加治療は行わず,他病死31例,原発死0例であった.・MM/SM1群47例.ly陽性11例中5例に追加治療を施行した.手術1例は胸膜転移再発し27ヶ月後に原病死.CRT4例中3例は無再発生存中,1例は照射野外リンパ節再発を来たし追加RTにて113カ月間生存中.ly陽性,追加治療無し6例中3例は無再発生存中.残りの3例はリンパ節再発を認めCRTが施行された.1例はESD後78カ月間担癌生存中,他2例は原病死した.ly陰性36例中CRTを施行した5例は再発なく,追加治療なしの31例中1例にリンパ節再発を認め10ヶ月後に原病死した.・SM2群9例:ly陽性5例中4例にCRTを施行し,3例は無再発生存中,1例にリンパ節再発を認め11ヶ月後に原病死した.ly陽性で追加治療無しの1例は再発なく50ヶ月後に他病死した.ly陰性4例中2例にCRTを追加し無再発,追加治療なしの2例も無再発生存中である.【結論】MM/SM1,ly陰性群では,追加治療なしでも再発率は1/31(3%)と許容範囲であった.しかしly陽性,追加治療なしでは再発率50%であり,この群は追加治療を要する.一方,CRTを追加施行したSM2,6例中5例は無再発生存で,ESD+CRTはSM2に対する有力な治療戦略と思われた. |