セッション情報 シンポジウム5

食道表在癌に対するESD+α療法の治療成績

タイトル S5-8:

食道表在癌に対するESD+Sentinel Node Navigationの可能性と臨床応用

演者 上之園 芳一(鹿児島大学消化器外科)
共同演者 有上 貴明(鹿児島大学消化器外科), 夏越 祥次(鹿児島大学消化器外科)
抄録 食道表在癌に対しては,症例に応じた低侵襲治療を考慮する必要がある.教室では食道癌に対してRadio-isotope法によるSentinel Node(SN)Navigationを検討してきた.また,MM/SM1癌を対象に,SN郭清を併用したEMR/ESDを臨床研究として行ってきた.食道表在癌におけるSN理論の臨床応用の可能性について検討した.【対象】術前診断でcT1食道表在癌と診断し通常の食道切除,リンパ節郭清を行いSN mappingを施行した74例と,術前MM/SM1と診断し,SN郭清併用EMR/ESDを行った25例を対象とした.【方法】術前日に99mTc-Tin colloidを内視鏡下に腫瘍周囲4カ所の粘膜下層へ0.5mlずつ注入した.注入約2時間後にlymphoscintigraphyの撮像を行った.SN mapping例では術中にSNをガンマプローブにより検索し,通常のリンパ節郭清後に残存の無いことを確認した.SN郭清併用EMR/ESDの症例では,SN郭清を行い,主病変はEMR/ESDにて切除した.すべてのリンパ節は通常のHE染色とAE1/AE3を用いたサイトケラチン免疫染色(CK)による微小転移診断を行った.【結果】SN mappingでの同定率は93.2%(69/74)で,SNの平均個数は3.1個であった.HE染色にて10例に転移を認め,更にCKにて5例に微小転移を認めた.微小転移を含めた転移検出感度は93.3%(14/15),正診率は98.6%(68/69)であった.1例において偽陰性例を認めたが,術前の超音波内視鏡,CTにて明らかにリンパ節転移陽性(N+)と診断した症例であった.SN理論の臨床応用としてのEMR/ESD+SN郭清では25例全例でSNが同定され,SN平均個数は2.4個,リンパ節平均郭清個数は6.5個であった.HEにて転移陽性2例,CKにて微小転移1例が検出され,1例に食道切除,2例に化学放射線療法が行われたが,現在まで全例でリンパ節再発は認めていない.【結語】食道表在癌では,微小転移診断を含めてSN理論は成立するものと考えられ,臨床応用の可能性が示唆される.術前MM/SM1,N0と診断された症例に対するSN郭清の併用は,安全性の高いESD適応拡大として有用な治療法となると考えられる.
索引用語