セッション情報 シンポジウム6

HP除菌後の病態と対応

タイトル S6-4:

H. pylori除菌後の病態に及ぼす腸上皮化生及び低用量アスピリンの影響

演者 古川 真依子(東京女子医科大学附属青山病院消化器内科)
共同演者 三坂 亮一(東京女子医科大学附属成人医学センター), 長原 光(東京女子医科大学附属青山病院消化器内科)
抄録 【目的】胃体上部の発赤(Diffuse Redness:DR)はHP感染に特徴的であり,一方前庭部大弯および体部小弯の櫛状発赤(Reddish Streaks:RS)はHP陰性の所見であった(Furukawa et al. Intern Med 50:951-959, 2011).今回我々は,腸上皮化生(IM)と低用量アスピリン(LDA)が除菌後のDR消失とRS出現に対していかなる影響を及ぼすか検討したので報告する.【方法】2001年から2011年までの間にHP除菌に成功しその後,内視鏡による経過観察ができた116例を対象にした.HP除菌前後の変化をDRの消失,RSの出現を指標に継時的に観察し,さらにこれらの変化に対するIM及びLDAの影響について検討した.更にDRの消失に関与する因子として,年齢,性別,LDAの内服の有無等で多変量解析を行った.【結果】HP除菌後DRの消失は1年以内に観察されるが,RSの出現はHP除菌後3年以降にみられる事が多い.除菌前にIMを有していたものは116例中57例であった.除菌後5年のRSの出現率については,IM(+)vs.IM(-)=6/37 vs. 20/29(P<0.01)とIM(+)で有意に低値であった.また,除菌後1年でのDR消失率については,LDA(-)vs.LDA(+)=66/75 vs. 3/14(P<0.01)とLDA(+)で有意に低率である一方,5年後では有意差がみられなかった.また,DR消失に関する因子を多変量解析で検討するとLDA服用のみが有意であった.【結論】HP除菌後にDRが消失し,RSが出現することは,胃粘膜の修復過程を表現していると考えられるが,除菌前のIMの存在とLDAの服用はこれらの過程に抑制的に作用していると考えられた.特にLDAはより早期の治癒過程に影響すると考えられた.
索引用語