セッション情報 シンポジウム6

HP除菌後の病態と対応

タイトル S6-7:

背景疾患とH. pylori除菌後胃癌リスクの関連性についての全国調査結果

演者 加藤 元嗣(北海道大学病院光学医療診療部)
共同演者 間部 克裕(北海道大学病院光学医療診療部), 坂本 直哉(北海道大学消化器内科)
抄録 【目的】H. pylori除菌による胃がん予防効果が明らかとなったが,除菌成功後も長期間にわたって除菌後胃癌の発生が報告されている.JGSG試験の10年に及ぶ長期観察結果で,H. pylori除菌による異時癌の有意な予防効果は長期に渡って続くものの,除菌成功後の異時癌リスクはなくならないことも明らかとなった.除菌成功後の胃癌発生率と背景疾患によるリスクを明らかにする目的で,全国調査を行った.【方法】厚生労働科学研究「ピロリ菌除菌による胃癌予防の経済評価に関する研究」班において,全国の141施設に全国アンケート調査の協力を依頼し,回収されたデータを解析した.調査内容は,除菌成功後に定期的に内視鏡検査で経過観察がされている症例と除菌後経過観察の期間,除菌後胃癌が発見された症例と発見時の時期についてである.【結果】全国38施設から除菌後症例6225例(男女比2.2:1,平均年齢56.1才,平均観察期間3.9年)が報告された.そのうち除菌後胃癌を186例認め,除菌後10年以上経過しても胃癌の発生を認めた.初発癌の除菌後発生率は1.6%で年率0.4%であった.また,異時癌の除菌後発生率は10.1%で年率2.9%であった.背景疾患による胃癌発生率は,胃潰瘍で最も高く2.4%,次にMALTリンパ腫の2.2%,慢性胃炎の1.6%,十二指腸潰瘍の0.3%であった.【結語】除菌成功後の胃癌発生には注意が必要であるが,その発生率は背景疾患によって差があった.
索引用語