セッション情報 シンポジウム6

HP除菌後の病態と対応

タイトル S6-9:

Helicobacter pylori除菌後早期胃癌の臨床病理学的特徴

演者 三浦 義正(自治医科大学内科学講座消化器内科学部門)
共同演者 佐藤 貴一(自治医科大学内科学講座消化器内科学部門), 菅野 健太郎(自治医科大学内科学講座消化器内科学部門)
抄録 背景:早期胃癌の内視鏡治療後のH.pylori除菌療法が保険収載されたが,すでに他疾患で除菌がなされた胃に早期胃癌が発見されるケースも少なくない.また早期胃癌の内視鏡治療後の除菌患者も増加すると考えられ,除菌後胃癌の臨床学的特徴を明らかにすることは重要と考える.対象と方法:過去に除菌歴が確認でき,ESD入院時にヘリコIgG抗体陰性かつヘリコ便中抗原陰性(または尿素呼気試験陰性)であった早期胃癌を除菌後胃癌と定義した.2009年4月から2012年8月に当科で内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が施行された504病変のうち,除菌後胃癌でESDが施行されたものは84病変であった.そのうち除菌から5年以上経過しESDを施行した1次癌12症例13病変(2.6%)を対象とした.結果:平均年齢67.8歳,男女比11:1であった.除菌後からESDまでの平均期間は93.4か月で最長で181か月であった.背景胃粘膜の萎縮は46%(6/13)でclosed typeで萎縮の程度が比較的軽いものが半数を占めた.除菌理由は胃潰瘍/十二指腸潰瘍/MALToma/腺腫/不明が6/3/1/1/2であった.平均腫瘍径23.2mm,組織型では分化型癌/未分化混在癌/未分化癌は11/2/0,胃癌存在部位はL/M/U 4/6/3,形態は76.9%(10/13)が平坦・陥凹型癌であった.SM癌が53.8%(7/13)と高率で,適応病変/適応拡大病変/適応外病変は5/2/6であり,ESDで治癒切除が得られなかったものは46%(6病変)にものぼった.この6病変はすべてM, U領域であり,5病変は除菌後の内視鏡の定期検査がなされていなかった.結論:除菌後胃癌をESD可能とするためにも,除菌後にも定期的な上部消化管内視鏡検査が必要である.内視鏡の間隔があいた際は,M/U領域の陥凹型癌がSM癌であることが多いため注意が必要である.
索引用語