セッション情報 シンポジウム6

HP除菌後の病態と対応

タイトル S6-11:

H. pyroli陽性胃MALTリンパ腫の除菌後の多重がんの発生に関する検討

演者 田近 正洋(愛知県がんセンター中央病院内視鏡部)
共同演者 松尾 恵太郎(愛知県がんセンター研究所疫学・予防部), 丹羽 康正(愛知県がんセンター中央病院内視鏡部)
抄録 【目的】限局期胃MALTリンパ腫は,H. pyroli除菌療法が行われ良好な長期成績が報告されているが,胃癌など多重がんの発生の報告も散見される.今回,除菌後の経過について検討した.【方法】対象は1994年から現在まで当施設にて1年以上経過を追え除菌療法を行ったH. pyroli陽性胃MALTリンパ腫連続107例.男性:女性=44:63,平均年齢58.0±12.0歳.臨床病期(Lugano分類)はI期:II1期:IV期=93:6:8例,DLBCL成分14例,API2-MALT1を12例に認めた.愛知県がん登録悪性新生物年齢階層別罹患率を用い,標準化罹患比(SIR)を検討した.なお,血液腫瘍は胃以外の部位にMALTリンパ腫以外の腫瘍の発生とした.【成績】一次治療は除菌療法を行い,平均除菌回数は1.2回(1-3回)で除菌成功率104/107(97.2%)であった.除菌により81例(75.7%)が反応し退縮した.反応しない26例は,二次治療として放射線治療14例,化学療法4例,胃全摘術2例に行い,6例は経過観察とした.平均観察期間は49.2か月(12~205か月),経過中6例が他病因死し,原病死は認めなかった.多重がんの発生は除菌後13例13病変認め,内訳は血液腫瘍5例,大腸2例,胃癌1例,その他5例であった.がんの発生は1997-2007年の登録データによるがん罹患を標準とすると,全がんでSIR 1.96(95%CI;0.89-3.02),血液腫瘍4.99(1.00-8.99),非胃がん2.21(0.96-3.46)と高い傾向を示す一方,胃がんでは0.83(0-2.46)とリスク上昇は認められなかった.【結論】胃MALTリンパ腫は除菌によく反応し予後は良好である.しかし,多重がんの発生は健常者に比し有意に高く,特に血液腫瘍の発生が高いことから胃以外の全身検索を含めた経過観察が重要である.
索引用語