セッション情報 シンポジウム6

HP除菌後の病態と対応

タイトル S6-12:

microRNA-34b/cの異常メチル化は胃癌の異時性多発リスクに関与する

演者 鈴木 亮(札幌医科大学第一内科)
共同演者 山本 英一郎(札幌医科大学第一内科), 篠村 恭久(札幌医科大学第一内科)
抄録 【背景・目的】胃癌の発生にはHelicobacter pylori(HP)による異常メチル化を介した癌抑制遺伝子の不活化が重要であると考えられている.以前に我々は,癌関連microRNAのスクリーニングにより,胃癌の背景粘膜でエピジェネティックに不活化されている腫瘍抑制的なmicroRNA-34b/c(miR-34b/c)を同定した.さらに,miR-34b/cは単発胃癌症例に比べて多発胃癌症例で有意に高いメチル化率を示し,異時性多発の予測マーカーとして有用であることが考えられた.そこで今回我々は,ESDの普及に伴い増加している内視鏡治療後・HP除菌治療後の異時性多発胃癌について,miR-34b/cを用い前向き研究を行って検証した.
【材料と方法】早期胃癌129例をサンプル採取日から追跡した.胃体部非癌粘膜の生検組織からDNAを抽出し,パイロシークエンス法を用いてmiR-34b/cメチル化を測定した.HP陽性患者は内視鏡治療後に除菌を行った.
【結果】異時性胃癌は平均13.4ヶ月で17症例(13%)に発症した.miR-34-b/cのメチル化率が17.3%よりも高いHigh risk群では2年胃癌発症率は28.5%と高値を示し,17.3%以下のLow risk群では6.5%と低値であった.Kaplan-Meier法による累積発症率は有意にHigh risk群で高かった(p=0.005).HP陽性かつ除菌成功群(n=49)とHP陰性群(n=26)でサブグループ解析を行ったところ,ともにHigh risk群で高値を示した(p=0.002,p=0.037).各除菌症例のmiR-34b/cメチル化率は除菌による有意な変化を認めなかった.
【結語】以上の結果より,胃癌の異時性多発リスクは,HP感染ステータスに影響を受けずに,miR-34b/cメチル化率によって予測できる可能性が示された.高リスク群は,除菌によるリスク低下は期待せずに慎重な経過観察を行うべきであると考えられた.
索引用語