抄録 |
進行胃がんに対する二次治療の臨床試験は,1985年にEORTCからシスプラチンの第II相試験が初めて報告され,その後2000年代には多数の報告がなされている.一方,第III相試験は現在までに4試験が報告された.2009年にドイツAIOグループからBest Supportive Care(BSC)とイリノテカンの第III相試験が報告され,イリノテカンの全生存期間における優越性が示されたが(2.4ヶ月vs. 4.0ヶ月,ハザード比0.48,p=0.012),登録症例数が僅かに40例と少数例であった.次に2011年に韓国からBSCと二次治療群(SLC)の第III相試験が報告され,全生存期間において有意にSLC群で良好であった(3.8ヶ月vs. 5.3ヶ月,ハザード比0.657,p=0.007).さらに2012年ASCO-GIでは,BSC群と分子標的薬剤であるeverolimusを用いたGRANITE-1試験が報告され,全生存期間における優越性を示すことができなかった(4.34ヶ月vs. 5.39ヶ月,ハザード比0.90,p=0.1244).以上から,胃癌二次治療において分子標的薬剤の有効性は未だ示されていないものの,殺細胞性の化学療法剤の有効性は示された.しかし,どの薬剤を用いるべきかが次の疑問として生じた.2012年ASCOにてWJOG4007試験(Weekly Paclitaxel(wPTX)とイリノテカン療法(IRI)の第III相試験)が報告された.その結果,全生存期間は,9.5ヶ月vs. 8.4ヶ月,ハザード比1.13,p=0.38とイリノテカンの優越性は示されなかった.現在進行中の第III相試験は,(1)S-1の継続使用の意義を問う試験,(2)IRIとIRI+CDDPの比較,(3)wPTXとIRIの比較,そして,(4)wPTXとwPTX+新薬,の臨床試験がある.現時点では,IRIとTaxaneの両薬剤を使い切ることが重要と思われるが,これらの臨床試験の結果が出揃い,新たな標準治療が決定されることを期待したい. |