セッション情報 シンポジウム7

胃癌化学療法の新しい知見

タイトル S7-3:

腹膜播種陽性胃癌に対する腹腔内投与併用化学療法

演者 石神 浩徳(東京大学外来化学療法部)
共同演者 北山 丈二(東京大学腫瘍外科), 渡邉 聡明(東京大学腫瘍外科)
抄録 腹膜播種陽性胃癌に対して,標準治療である全身化学療法のみでは限界があり,治療成績を向上させるためには,効果の高い局所療法である腹腔内化学療法と胃切除を付加した集学的治療の開発が急務である.Paclitaxel(PTX)は腹腔内投与により腹腔内濃度が高く維持されるという薬物動態的特性を有し,卵巣癌では既に第III相試験により有用性が確認されている.胃癌でも治療効果が報告されてきたが,未だコンセンサスが得られていないのが現状である.当院におけるPTX腹腔内投与併用化学療法および胃切除の成績を報告する.【S-1+PTX経静脈・腹腔内併用療法】第I相試験により,好中球減少を用量制限毒性として,PTX腹腔内投与の推奨投与量を20mg/m2に決定した.第II相試験では1年全生存率78%であり,腹水減少を62%,腹水細胞診陰性化を86%に認めた.主な有害事象(Grade3/4)は好中球減少(38%),白血球減少(18%)であった.追跡調査では生存期間中央値(MST)23.6ヵ月,5年全生存率19%であった.本療法は2009年に高度医療に承認され,旧規約P2,P3症例35例が登録された第II相試験では,1年全生存率は77%であり,既報の試験成績が確認された.現在,本療法とS-1+CDDP併用療法を比較する第III相試験(PHOENIX-GC試験)を実施中である.【化学療法奏効後胃切除】腹膜播種を伴う初発胃癌症例100例中,化学療法が奏効し,腹膜播種が消失または縮小した60例(P0CY1/旧P1/P2/P3:6/5/16/33例)に胃切除を施行した.術後に重篤な合併症はなく,42例で腫瘍遺残R0が達成され,無再発生存期間中央値16.7ヵ月,MST 34.5ヵ月であった.【結語】パクリタキセル腹腔内投与は既存の全身化学療法と安全に併用可能であり,胃癌腹膜播種に対して有効であること,および化学療法奏効後の胃切除は生存期間の延長につながることが示唆された.第III相試験により有用性を証明し,その後,術前化学療法や術後補助化学療法に応用することにより,進行胃癌の治療体系に変革をもたらすことが期待される.
索引用語