セッション情報 シンポジウム7

胃癌化学療法の新しい知見

タイトル S7-6:

胃癌周術期補助化学療法の進歩~S-1+αの可能性~

演者 掛地 吉弘(神戸大学食道胃腸外科)
共同演者 鈴木 知志(神戸大学食道胃腸外科), 田中 賢一(神戸大学食道胃腸外科)
抄録 胃癌に対する術後補助化学療法は,ACTS-GC試験の結果よりT3(SS)N0を除くStage II/IIIに対するS-1の1年間投与が標準療法となっている.ACTS-GC試験でのStage II,IIIA,IIIBの5年生存率はS-1投与群で各々84.2%,67.1%,50.2%であり,StageIIIA,IIIBでは再発率が高く,より再発を抑えるためにS-1単独投与よりも強力な化学療法が臨床試験として検討されている.同時併用のS-1+α療法として,S-1+CDDP療法やS-1+Docetaxel療法の第II相試験が行われ,投与方法の工夫により3~5か月のS-1+α療法の完遂率は80%前後と忍容性が認められている.逐次併用療法の漿膜浸潤陽性胃癌症例を対象とした第III相試験としてフッ化ピリミジン単独療法とpaclitaxel→フッ化ピリミジン逐次併用療法の比較およびTegafur,Uracil(UFT)とS-1の比較を検討するSAMIT試験も結果が待たれる.一方で術後補助化学療法は胃切除後であるため,決められた投与量を投与することが難しく,術後よりもコンプライアンスが良い術前化学療法の効果が期待される.現在,我が国では根治切除可能な大型3型・4型胃癌に対する術前S-1+CDDP併用療法による第III相試験(JCOG0501)が実施されている.第II相試験として,根治切除可能なstage IIIA,IIIB,IV(T4N2のみ)胃癌を対象としてS-1+Docetaxel療法を行い,47例の登録で根治胃切除症例が44例(93.6%),RECIST奏効割合34%,病理学的奏効割合(Grade 1b以上)47%であった.より強力な抗腫瘍効果を求めた3剤併用療法として,高度リンパ節転移を伴う進行胃癌に対する術前Docetaxel+CDDP+S-1の第II相試験(JCOG1002)も進行中である.より確実な治療成績の向上を目指して,周術期補助化学療法の現状と今後の展開を議論したい.
索引用語