セッション情報 シンポジウム8

切除不能大腸癌の化学療法

タイトル S8-2:

切除不能大腸癌の化学療法における抗癌剤感受性試験(collagen gel droplet embedded culture drug sensitivity test:CD-DST)を用いたfirst lineの個別化の試み

演者 落合 匠(東京都保健医療公社東部地域病院外科)
共同演者 中谷 晃典(東京都保健医療公社東部地域病院外科), 伊能 壮(東京都保健医療公社東部地域病院外科)
抄録 【背景】近年切除不能大腸癌化学療法においては,分子標的治療薬(抗VEGF抗体薬/抗EGFR抗体薬)併用による治療が標準となっている.抗EGFR抗体薬に関してはバイオマーカーによる個別化がされているが,抗VEGF抗体薬においては未だ有用なバイオマーカーが見つかっていないのが現状である.一方従来の殺細胞性抗癌剤におけるfirst lineはFOLFOX/FOLFIRI療法どちらを先行させても良く,重要なことはkey drugである3剤(5-FU,oxaliplatin,irinotecan)を使い切る事であるとされている.しかしながら実臨床においてsecond lineが必ずしも施行できるとは限らずfirst lineにて治療中止にいたる症例も少なからず存在する.また施行期間においてもfirst lineが最も長いことは周知の事実であり,このためfirst lineの個別化すなわち標準治療の個別化ができればより予後の向上につながると考えられる.【目的】CD-DSTを用いた切除不能大腸癌におけるfirst lineの個別化.【対象】2008年3月~2012年8月に術前化学療法未施行50例の大腸癌切除症例.【方法】CD-DSTを用い各症例の腫瘍抑制率(IR)を求めた.接触条件はFOLFOX:5-FU+l-OHP;6.0+3.0 μg/ml,24 hrs,FOLFIRI:5-FU+SN-38;6.0+0.2 μg/ml,24 hrsとした.FOLFOX/FOLFIRIの臨床奏効率が約50%である事に基づき,2接触条件におけるIRのヒストグラム・累積分布を評価・検討した.【結果】FOLFOX/FOLFIRにおけるIRの分布は正規分布を呈し,その中央値はそれぞれ62.9,72.3%であった.FOLFOX/FOLFIRの累積分布の検討よりFOLFOXがfirst lineとして推奨される症例は28例,FOLFIRIが推奨される症例は20例であり,同等の有効性を示したのは2例であり,全例においてfirst lineの個別化が可能であった.【結語】CD-DST(生検検体でも施行可能)によりfirst lineの個別化が可能であり,この事により更なる予後の改善が期待でき得ると考えられた.
索引用語