セッション情報 シンポジウム8

切除不能大腸癌の化学療法

タイトル S8-4:

大腸癌抗EGFR抗体療法の効果予測における4種類のEGFRリガンド(AR,HB-EGF,TGF-α,EREG)解析の有用性

演者 吉田 道弘(名古屋市立大学消化器・代謝内科学)
共同演者 志村 貴也(名古屋市立大学消化器・代謝内科学), 城 卓志(名古屋市立大学消化器・代謝内科学)
抄録 [目的]KRAS野生型の切除不能進行再発大腸癌に対して抗EGFR抗体(cetuximab,panitumumab)は広く臨床使用されているが,KRAS野生型においてもその効果は限定的でありさらなるバイオマーカーの同定が必要と考えられる.今回我々は抗EGFR抗体を投与された大腸癌において,7種類すべてのEGFRリガンドの発現解析を行いバイオマーカーとしての有用性を検討した.[方法]2009年1月から2012年6月に当院でcetuximabまたはpanitumumabを投与した切除不能進行再発大腸癌36例中,二次治療以降に投与された26例を対象に,大腸癌手術標本または生検組織を用いて7種類のEGFRリガンドの免疫染色を行い,その発現と抗EGFR抗体の治療効果について比較検討した.[結果]男女比は16:10,年齢中央値は66.5歳(41-92歳)で,各EGFRリガンドの発現率はamphiregulin(AR):61.5%(16/26),heparin-binding EGF(HB-EGF):50.0%(13/16),transforming growth factor-α(TGF-α):30.8%(8/26),epiregulin(EREG):46.5%(12/26),betacellulin:80.8%(21/26),epigen:23.1%(6/26),EGF:11.5%(3/26)であった.7リガンド中AR,HB-EGF,TGF-α,EREGにおいて抗EGFR抗体療法の治療効果と相関が認められた.これらをもとにAR,HB-EGF,TGF-α,EREGのうち,2種類以上のリガンドの発現を有する群(P群,N=15)と1種類以下の群(N群,N=11)に分けて解析したところ,P群において有意に良好なRR(53.3% vs. 0.0%;p=0.004),DCR(93.3% vs.9.0%;p=0.00002)およびPFSの延長(中央値:231日vs.79日;p=0.000008)が確認された.[結論]免疫染色を用いたEGFRリガンド解析によりAR,HB-EGF,TGF-α,EREGの4リガンドにおいて抗EGFR抗体療法の治療効果と相関が認められ,その4リガンド中2種類以上発現例を抽出する解析法は大腸癌抗EGFR抗体療法におけるバイオマーカーとして有用であると考えられた.
索引用語