セッション情報 シンポジウム10

胆膵癌の化学療法の最前線

タイトル S10-5:

化学療法の補助としての成分栄養療法を併用した膵癌の治療戦略

演者 中村 陽介(名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部)
共同演者 廣岡 芳樹(名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部), 後藤 秀実(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学)
抄録 【目的】切除不能膵癌(PC)に対する癌化学療法時に,成分栄養剤(ED)による栄養療法の併施が予後に与える影響について検討した.【方法】2009年4月から2012年6月までに当院を受診したPC72例を対象とした.Gemcitabine(+Erlotinib)による癌化学療法と同時に,栄養療法としてED(エレンタール2包/日)の投与を行った.EDを12週間以上継続したED群とそれ以外の非ED群に分類し,以下につきretrospectiveに検討した.1)両群の背景因子(年齢,性別,病期,Performance status(PS),BMI,Albumin,HbA1c,CRP,CA19-9,腫瘍径)を比較した.2)両群の生存曲線をKaplan-Meier法で推定しその差をLog rank testを用いて比較検討した.3)各背景因子とEDの有無が全生存期間(OS)に与える影響について,単変量Cox回帰分析を行った.なお,正規分布を示さないCRPとCA19-9に関してはその中央値(それぞれ0.3mg/dl,350U/ml)で2群に分け検討した.4)単変量分析の結果をもとに,多変量Cox回帰分析を行った.【結果】1)非ED群においてPS1以上の割合が多かった(P=0.041).また非ED群において年齢は高値傾向,BMIは低値傾向を認めたが,有意差は認めなかった.2)ED群の生存期間中央値は443日(95%信頼区間:379-507)であったのに対し,非ED群のそれは216日(168-274)でED群において生存期間の延長を認めた(P<0.0001).3)EDの有無(Hazard ratio:HR=0.24,P<0.0001),PS(HR=2.36,P=0.0256),病期(HR=3.92,P=0.0011),CA19-9(HR=2.18,P=0.0124)は有意にOSに影響した.4)多変量Cox回帰分析の結果,OSに影響を与える独立した因子はEDの有無(HR=0.14,P<0.0001)および病期(HR=5.88,P<.0001)であった.【結論】成分栄養剤を用いた栄養療法は,PCの化学療法における補助療法として予後を改善しうる.
索引用語