セッション情報 シンポジウム10

胆膵癌の化学療法の最前線

タイトル S10-6:

当科における進行膵癌に対する化学療法の試み:1次治療と不応例の治療戦略

演者 中井 陽介(東京大学消化器内科)
共同演者 伊佐山 浩通(東京大学消化器内科), 小池 和彦(東京大学消化器内科)
抄録 【目的】進行膵癌に対する1次治療は,標準治療とされてきたGemcitabine(Gem)だけでなく,FORFIRINOXなど多剤併用療法も期待される一方,2次治療の開発・標準化は依然として進んでいないのが現状である.当科における1次治療と不応例に対する治療戦略について検討した.【対象】1次治療の臨床試験(Gem+S-1 vs. Gemの比較試験[n=106]・Gemcitabine+Candesartan(GECA)の第1相[n=14]・第2相試験[n=35]・Gem+S-1+LVの第1相試験[n=6])と不応例に対するCPT-11[n=56]・S-1+paclitaxel iv+ip[n=15])の成績を検討.【結果】[1次治療]Gem+S-1併用療法とGemの無作為化比較試験(GEMSAP試験)では,4週1コースで行ったGem+S-1は,安全に施行可能であり,PFS 5.4 vs. 3.6カ月,1年生存率52.8 vs. 30.2%と有意に良好であり,OSは有意ではないものの4.7カ月の延長を認めた.当科のretrospective analysis・基礎研究で有効性が示されたレニン・アンギオテンシン系抑制による新しい試みであるGECA療法の第1相試験ではCandesartan16mgと用量設定され,PFS 7.6・OS 22.9カ月と良好な結果が得られた.続く多施設共同第2相試験では,PFS 4.3・OS 8.7カ月であったが,subgroup解析では,PFS 11.3・OS 22.6カ月と良好な結果が得られた局所進行例における有用性が示唆された.現在はさらに強力な1次治療の開発として,Gem+S-1にleucovorinを加えたGSL療法の用量設定を目的とした第1相試験を開始,現在6例を登録中である.[2次治療以降]Gem・S-1不応例に対する治療として行ったCPT-11療法は,TTP 2.9・OS 5.3カ月,特にUGT1A1*6 or *28群では,好中球減少などの有害事象も多い一方で,TTP 5.3・OS 8.0カ月と良好な成績が得られた.またこれまで治療難渋例であった癌性腹水貯留例に対するS-1+paclitaxelの腹腔内投与では,細胞診陰性化53%,腹水消失13%,減少20%と期待される結果が得られている.【結語】進行膵癌の治療成績の向上には,強力な1次治療とともに,不応例に対する病態に応じた治療法の開発が重要と考えられた.
索引用語