セッション情報 シンポジウム10

胆膵癌の化学療法の最前線

タイトル S10-7:

Erlotinibは膵癌治療をどう変えたか?~当院での1年間の使用経験より~

演者 今岡 大(愛知県がんセンター中央病院消化器内科)
共同演者 山雄 健次(愛知県がんセンター中央病院消化器内科), 清水 泰博(愛知県がんセンター中央病院消化器外科)
抄録 <背景>膵癌に対する化学療法において,昨年よりようやく本邦においてもgemcitabine(GEM)とerlotinibの併用療法が承認されるに至った.しかし併用療法による予後延長効果が僅かであることや毒性の問題から,治療の位置づけに関しては未だ議論の分かれるところである.<方法>2011年7月より当院にてGEMとerlotinibの併用による化学療法が行われた切除不能進行膵癌20例を対象に,予後と毒性について検討した.検討に際し,年齢,ECOG-PS,主占拠部位,病期,減黄術の有無,喫煙歴をmatchingさせたGEM単独投与40例をコントロール群として比較を行った.Matchingは本研究についてblindな2名のreviewerによって行われた.<結果>全生存期間中央値はGEM群;8.8ヶ月,GEM+erlotinib群;10.3ヶ月であった(ハザード比;0.81 95%信頼区間;0.35-1.85).奏効率はGEM群;15%,GEM+erlotinib群;5.0%であった.Grade 3以上の血液毒性の発現頻度はGEM群;27.5%,GEM+erlotinib群;45%であり有意差は認められなかった.Grade 2以上の非血液毒性はGEM群;22.5%,GEM+erlotinib群;65%であり,erlotinib併用群において有意に高頻度であり(p=0.001),GEM群の1例,GEM+erlotinib群の2例に間質性肺炎が認められた.一次治療中に発生した有害事象による平均入院日数は,GEM群;5.4日,GEM+erlotinib群;18.4日であり,erlotinib併用による入院期間の有意な延長がみられた(p=0.003).<まとめ>Erlotinib併用によって膵癌の予後は延長する傾向が認められたが,有意差は認められなかった.一方,erlotinib併用により非血液毒性は有意に高頻度に発現し,治療中の入院日数の延長が認められた.膵癌治療においてerlotinibは予後延長効果が期待できるが,毒性対策には十分に留意する必要がある.
索引用語