セッション情報 シンポジウム10

胆膵癌の化学療法の最前線

タイトル S10-8:

局所進行切除不能膵癌に対するTS-1併用化学放射線療法第2相臨床試験の長期成績

演者 新地 洋之(鹿児島大学保健学科)
共同演者 高尾 尊身(鹿児島大学フロンティアサイエンス研究推進センター), 夏越 祥次(鹿児島大学消化器外科)
抄録 【目的】遠隔転移のない局所進行切除不能膵癌50例(膵頭部癌36例,膵体尾部癌14例)を対象としたTS-1併用化学放射線療法&TS-1維持化学療法の効果と安全性を評価する目的で,第2相臨床試験を施行し以下の長期成績を得た.【方法】体外放射線は1回1.25Gyを朝夕2回の2.5Gy/日,週5日間で4週間,計50Gy施行.TS-1は80mg/m2/日(分2)を3週間投与.維持化学療法として,TS-1 80mg/m2/日を2週投与,2週休薬.【結果】43例(86%)が化学放射線療法を完遂でき,40例(80%)に維持化学療法を施行できた.化学放射線療法の主な有害事象としては白血球減少(40%),悪心(34%),食欲不振(28%)などを認めたが,Grade 2以下の軽度なものが多く,Grade 4以上を認めなかった.維持化学療法は平均8クール施行され,食欲不振(28%)などを認めたが,全例Grade 2以下.抗腫瘍効果は50例中PR 15例,SD 23例で,奏効率は30%,病勢制御率は76%(38/50例).腫瘍マーカー(CA19-9)は治療前に異常値を示した43例中18例(42%)で50%以上の低下を認め,6例(14%)は正常値まで回復した.生存期間中央値は14.3カ月(5.4-72カ月),1年生存率は62%,2年生存率は28%,5年生存率は7%.現在までに50例中47例死亡.3年以上の生存例を7例,5年以上の長期生存例を2例認めた.2例に著明な腫瘍縮小を認め,化学放射線治療終了後各々3カ月,11カ月に外科的に根治切除しえた.前者は切除後27カ月に腹膜再発にて死亡,後者は切除後35カ月無再発生存中である.47例に再燃を認め,部位は局所19例(40%),肝15例(32%),腹膜17例(36%)などであった.【考察】膵癌に対するTS-1併用化学放射線療法は忍容性が良好で,きわめて有効な治療法であることが示唆された.今後,TS-1併用化学放射線療法を主体とした集学治療が期待できる.
索引用語