セッション情報 シンポジウム10

胆膵癌の化学療法の最前線

タイトル S10-10:

膵癌に対する術前化学療法(GS療法)の有効性評価:大規模比較試験に向けて

演者 元井 冬彦(東北大学肝胆膵外科)
共同演者 片寄 友(東北大学統合がん治療外科), 海野 倫明(東北大学消化器外科)
抄録 【背景】切除企図膵癌に対する術前治療は有望な可能性があるものの,どのような治療戦略が最適か確立していない.我々は現在,膵癌術前治療の前向きII相試験(UMIN-1504,3402,4148)を行い,その有効性,安全性の検証を進めてきた.【目的】切除企図膵癌に対する術前全身化学療法(NAC)の意義を検証し,また治療レジメン(GEM単剤vs GS療法)別に有効性を比較した.【方法】2004年以降に当科で,切除を企図して治療を開始した膵癌302例を対象とした.1)対象を切除可能(112例),切除境界(190例)のサブグループに分け,治療戦略(術前治療:N群,手術先行:S群)別に切除率,R0切除率を求めて比較した.2)切除例の全生存期間(OS),無再発生存期間(RFS)を,NAC-GEM(32例)とNAC-GS(51例)で比較した.【成績】1)切除可能例では切除率はN群(97%),S群(98%)とも同等で,R0切除率はN群90%でS群(84%)に比べやや高かった.一方,切除境界例では,切除率はN群77%でS群(69%)に比べやや高かったが,R0切除率はN群(60%),S群(59%)と同等であった.切除例生存率は,切除可能例,切除境界例ともN群で良好であった.2)NAC-GSはNAC-GEMに比べ,OS(p=.031),RFS(p=.0082)ともに有意に長かった.2年生存率を比較すると,切除可能例ではNAC-GS群67% S群50%であり(p=.17),切除境界例ではNAC-GS群56%,S群34%(p=.091)いずれも,NAG-GS群で延長していた.【結論】全身化学療法による膵癌に対するNACの意義は,病態制御による切除率の向上であると考えられた.また現時点で最適なレジメンはGS療法であり,切除先攻の標準治療に,2年生存率15-20%程度の上乗せが期待できると考えられ,2013年より大規模無作為比較試験を開始する予定である.
索引用語