セッション情報 シンポジウム11

消化管・膵神経内分泌腫瘍の新たな治療戦略

タイトル S11-5:

膵神経内分泌腫瘍切除症例の検討からの治療戦略

演者 北郷 実(慶應義塾大学一般消化器外科)
共同演者 田邉 稔(慶應義塾大学一般消化器外科), 北川 雄光(慶應義塾大学一般消化器外科)
抄録 (目的)膵神経内分泌腫瘍(PNET)の切除症例から治療戦略を検討した.(対象)1986年~2012年までに切除したPNET39例.(結果)平均年齢52歳(24~77歳),男性19例,女性20例.機能性(F)14例(インスリノーマ9例,ガストリノーマ4例),非機能性(NF)25例.MEN1を合併したものが5例,von Hippel Lindau病(VHL)を合併したものが3例.膵臓多発症例は6例.組織学的に悪性(JPS)と診断されたものは22例(F:7例,NF:15例).術式は膵部分切除(核出)6例,PPPD 10例,DP 18例,Appleby 1例,TP 3例,LAMP 1例.同時性肝転移,リンパ節転移を各々4例(F:1例,NF:3例),8例(F:3例,NF:5例)に認めた.同時性肝転移の2例中1例にPPPD+肝部分切除を,1例はDP後14か月目に生体肝移植を行った.平均腫瘍径は,良性例1.8cm,悪性例4.2cm,同時肝転移症例4.2cm,リンパ節転移症例5.7cmであった.リンパ節転移は,最大腫瘍径13.5cmの1例のみ#16転移を認めたが他はすべて1群までの転移であった.術後再発は7例(MEN1合併2例,VHL合併2例)に認め,同時性肝転移またはリンパ節転移を認めた1例に全身骨転移,リンパ節転移を認めた2例を含む3例に肝転移を認めた.肝転移の1例にTACE/肝動注/RFAを,1例にTACE/オクトレオチド投与を行った.予後は観察期間平均74.5か月(中央値64か月)で同時性肝転移を認めた3例と他病死した1例以外は全例(MEN1・VHL合併症例含)術後生存中である.(結語)組織学的悪性症例やリンパ節転移を伴う症例は腫瘍径が大きい傾向があり,リンパ節廓清を伴う根治的手術が必要である.一方腫瘍径が小さいものでは良性例が多く鏡視下手術を含む低侵襲手術による診断的切除で十分と考えられた.MEN1またはVHL合併症例に再発症例が多いものの担腫瘍状態でも予後良好であり,縮小手術で十分と考えられた.しかし同時性肝転移を伴う症例は予後不良であるため,手術以外の集学的治療の開発が必要である.
索引用語