セッション情報 シンポジウム11

消化管・膵神経内分泌腫瘍の新たな治療戦略

タイトル S11-10:

当科における進行性膵神経内分泌腫瘍に対するエベロリムスの使用経験

演者 五十嵐 久人(九州大学病態制御内科)
共同演者 河邉 顕(九州医療センター消化器内科), 伊藤 鉄英(九州大学病態制御内科)
抄録 [背景]進行性膵神経内分泌腫瘍(PNET)に対する,mTOR阻害薬のエベロリムスを用いた臨床試験(RADIANT-3:RAD001 in advanced neuroendocrine tumors)が近年行われた.その結果を受け本邦でも保険収載されたが,同時に日本人サブグループ解析における有効性も示された.[目的]当科から参加したPNET症例におけるRAD001(エベロリムス)の効果について検討する.[方法]RADIANT-3では進行性PNET患者410症例が二重盲検法にてエベロリムス10mg/day投与群(E群)とプラセボ群(P群)に振り分けられ,主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)であった.今回当科症例における1)エベロリムスによる治療期間,2)2年,3年生存割合を検討した.更に自験例より3)注意すべき副作用対策,4)内分泌症状への効果を提示する.[結果]本邦からは40名登録され,23名がE群,17名がP群に振り分けられた.RADIANT-3全体のPFS中央値はそれぞれ11.0カ月と4.6カ月,日本人症例では19.45カ月と2.83カ月でE群において有意に延長効果を認めた.当科からは21症例が参加し,男女比は12対9,E群とP群の比は13対8であった.CRは認められず,PRはE群,P群とも1例ずつ認められ,P群例はオクトレオチドLAR併用のガストリノーマ症例であった.この試験ではPD判定後のクロスオーバーが許容されている.1)当科全症例のエベロリムス治療期間の中央値は745日(28‐1559),うち2年以上服用した症例は11症例(E群7例,P群4例)であった(抄録登録時).2)全症例における2年,3年生存割合はそれぞれ85.7%,81.0%であった.3)有害事象としては発疹,粘膜炎,感染症,爪の異常,鼻出血,肺炎が認められた.自験例より間質性肺炎併発症例について提示する.4)インスリノーマの1例で低血糖症状を著明に改善したが,VIPoma症例では低カリウム血症を来し,オクトレオチドLARの併用が必要であった.[結語]エベロリムスはPNETの内科的治療として有効であるが,長期成績については更なる検討が必要である.
索引用語