セッション情報 シンポジウム12

GIST研究の進歩と臨床への展開

タイトル S12-3:

GIST遺伝子解析と臨床的悪性度の比較検討

演者 舩坂 好平(名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部)
共同演者 宮原 良二(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学), 後藤 秀実(名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学)
抄録 【背景】消化管間葉系腫瘍(GIST)の悪性度評価(リスク分類)に関しては腫瘍径,核分裂像,発生臓器による3項目により決定され,c-kitを含む分子生物学的因子は含まれていない.リスク分類は腫瘍径に強く依存しており悪性度予測というより結果を反映したものである.新たな悪性度予測因子を見つけることは,小さなGISTに対する治療方針の選択に有用と考えられる.【目的】GISTのリスク分類,臨床的悪性度(浸潤,転移)と分子生物学的因子との関連を検討し,腫瘍径以外でリスク分類に関与する因子を明らかにする.【対象】2008年10月から2012年9月までに当院および関連病院でGISTを疑いEUS-FNAもしくは手術が施行された粘膜下腫瘍60検体のうち病理学的に確診されたGISTで遺伝子研究に同意された53検体(EUS-FNA:19,手術:3).【方法】採取検体よりRNAを抽出し,direct sequence法でc-kit変異もしくはPDGFRα変異を解析.またReal-time PCR法により,PDGFRA,ETV1を定量化し,リスク分類,臨床的悪性度と比較検討した.またEUS-FNAと手術の両方で採取した9例で変異,発現解析結果を比較しEUS-FNAの遺伝子検討におけるfeasibilityについて検討した.【結果】c-kit変異を39例(89%)に認め,内訳はexon9:2例,exon11:36例,exon13:1例であった.PDGFRα変異は3例に認め,変異陰性は2例のみであった.リスク分類の内訳は,高:16例,中等度:1例,低:26例であった.発現解析では3遺伝子とも高,中等度リスク群で低リスク群より発現が有意に低下しており,臨床的悪性像(浸潤,転移)による比較でも同様の傾向であった.腫瘍径と各遺伝子発現は弱い負の相関であり,腫瘍径に依存が少ないと考えられた.手術例と比較したEUS-FNAの遺伝子解析は変異解析の完全一致と発現解析の強い相関を認め,遺伝子解析におけるfeasibilityが確認できた.【結論】c-kitを含む遺伝子発現は腫瘍の悪性度に関与する可能性が示唆され,これらの解析はEUS-FNAにより可能と考えられた.
索引用語