セッション情報 シンポジウム12

GIST研究の進歩と臨床への展開

タイトル S12-4:

小さな上部消化管粘膜下腫瘍の超音波内視鏡による経過観察症例の検討

演者 根引 浩子(大阪市立総合医療センター消化器内科)
共同演者 丸山 紘嗣(大阪市立総合医療センター消化器内科), 山崎 智朗(大阪市立総合医療センター消化器内科)
抄録 【背景】小さなGISTの自然経過についての報告は少ない.当院では上部消化管粘膜下腫瘍には,超音波内視鏡(EUS)を行っている.固有筋層に一致する第4/5層に存在する低エコー腫瘤を間葉系腫瘍(GIMT)と診断する.5cm以上のもの,臨床症状がある,増大を認めて2 cm以上,EUS-FNAでGISTと診断されたものについては手術を勧める.それ以外の症例は初回半年後に,その後は1年ごとにEUSで経過観察している.【目的】当院における上部消化管GIMTの経過観察例についてその経過を検討する.【対象と方法】当院で2回以上のEUSを行い経過観察している上部消化管GIMT96例の経過を検討した.【結果】対象症例は27歳~82歳(中央値60歳)男性39例,女性57例.GIMTの存在部位は食道11例,胃82例,十二指腸4例.観察期間の中央値2.5年最長17年.初回EUSでの腫瘍の大きさは長径1cm未満32例,1cm~2cm48例,2cm以上16例.EUSで測定した腫瘍の長径と短径から算出した体積が1.5倍以上になったものを増大と定義した場合,食道と十二指腸の症例は全て増大なく経過しているが,胃82例中34例に腫瘍の増大を認めた.そのうち12例で手術を施行.病理結果はGIST low risk8例,平滑筋腫3例,神経鞘腫1例であった.増大症例のうちの1例はEUS-FNAで平滑筋腫と診断したため経過観察としており,残り21例は2 cm以下のためさらに経過観察としている.増大率は1.5倍に満たなかったものの2 cm以上になったためEUS-FNAを行った結果GISTと診断したため手術を施行したものが1例あり,潰瘍が明らかとなったため手術をした1例は神経鞘腫であった.【結論】食道と十二指腸のGIMTは経過観察中に増大を認めていないが,胃GIMTはその約41%に増大を認めた.増大したものでも平滑筋腫・神経鞘腫といった良性腫瘍も含まれており,またGISTも全例low riskであった.初回半年・その後1年ごとのEUSによる経過観察期間は十分であり,経過中増大してもEUS-FNAなどによる病理組織診断の上で手術適応を考慮すべきであると考えられた.
索引用語