セッション情報 シンポジウム12

GIST研究の進歩と臨床への展開

タイトル S12-9:

胃GIST症例と健診者との胃粘膜萎縮に関する比較検討

演者 富永 和作(大阪市立大学消化器内科学)
共同演者 大西 美穂(大阪市立大学消化器内科学), 杉森 聖司(大阪市立大学消化器内科学)
抄録 【目的】GIST発生の遺伝子異常と臨床病理学的特徴と悪性度との関連性に加え,GIST内部にグレリンあるいはグレリン受容体が発現していることが報告されている.胃粘膜萎縮は進行に伴い,グレリンなどの内分泌学的に変化することは知られているが,胃粘膜萎縮と胃GISTの存在ならびに増大との関連性についての報告はない.胃GIST経過観察患者,当院総合診療センター初診者ならびに会社健診センター受診者を用いて,内視鏡的胃粘膜萎縮と生活習慣病の有無について後方視的に比較検討した.【方法】2004年4月から2011年12月の間に当院にて病理組織学的にGISTと診断された79例と,2010年4月から2011年3月の間で当院総合診療センターを受診し初回内視鏡検査を行った355例,2009年4月から2010年3月の間で会社健診センターにて通常内視鏡検査を行った205例で胃粘膜下腫瘍を認めなかった患者を対象として,性別,年齢について各々1:3,1:2マッチングを行い,生活習慣病などの患者背景,木村・竹本分類による内視鏡的胃粘膜萎縮について検討した.【成績】1.GIST群(74例)と総合診療センター群(222例)では,生活習慣病などの背景に差はなかった.萎縮の有無別では62.3 vs. 72.1%と差は無かったが,open type萎縮の割合は,30.2 vs. 53.1%(p=0.009,OR=2.62,CI:1.27-5.38)とGIST群で有意に低かった.2.GIST群(44例)と健診者群(88例)では,萎縮の有無別で53.8 vs. 86.0%(p<0.001,OR=5.29;CI:2.20-12.66),open type萎縮の割合で19.0 vs. 29.7%(p<0.001)と,いずれもGIST群で少なかった.3.EUSで2回以上経過観察しえたGIMT群87例の中で,その後増大を確認した19例と不変であった68例では,平均年齢等に差は認めなかったが,高度萎縮の割合は10.4 vs. 32.4%(p=0.061)であり,増大群で低値を示した.【結論】胃GIST症例では胃粘膜萎縮が軽度であり,増大などの病態に関与する可能性が示唆された.
索引用語