セッション情報 シンポジウム13

消化器疾患における新規分子マーカー

タイトル S13-3:

クローン病バイオマーカーとしての「ガラクトース欠損IgG」―Agal-IgG ELISAの開発と臨床応用に向けた検討

演者 新崎 信一郎(大阪大学消化器内科学)
共同演者 三善 英知(大阪大学機能診断科学), 竹原 徹郎(大阪大学消化器内科学)
抄録 【目的】炎症性腸疾患(IBD)診療において,臨床に有用かつ簡便に測定可能なバイオマーカーが求められて久しい.我々はこれまでに,IBD患者の血清IgGに結合する糖鎖を解析し,ガラクトース欠損IgGがIBD特にクローン病(CD)患者で増加し,有用なバイオマーカーとなり得ることを報告してきた(Shinzaki S, Iijima H, et al. Am J Gastroenterol 2008).糖鎖解析は測定が煩雑で汎用性に欠けることから,今回,レクチンを用いたより簡便な測定系を開発し,その有用性について検討した.【方法】CD患者の血清IgGに親和性の高いレクチンを,レクチンアレイを用いて網羅的にスクリーニングした.抽出されたレクチンを用いて,ガラクトース欠損IgGを測定するためのレクチンELISA系を構築し,410名の日本及び米国のIBD患者,IBD以外の腸炎患者,健常者を対象として測定を行い,臨床パラメータとの関連を検討した.【結果】CD患者血清のIgGは,健常者に比べて,Agaricus bisporus Agglutinin(ABA)およびGriffonia simplicifolia Lectin-II(GSL-II)に高い親和性を示した.段階的糖鎖切断法にてこれらレクチンがガラクトース欠損IgGを認識していることを確認のうえ,ABAとGSL-IIを用いてガラクトース欠損(=Agalactosyl)IgGを測定するELISAシステムを構築し,Agal-IgG ELISAと命名した.Agal-IgG値は,健常者よりもCD患者で有意に高値を認め,CDの疾患活動性と有意に相関するとともに,CRPよりもインフリキシマブによる治療効果予測に優れていた.また,IBDマーカーとして海外で使用されているanti-Saccharomyces cerevisiae antibody(ASCA)と併用することで,単独より高い疾患診断特異度が得られた.さらに,米国IBD患者に対してもAgal-IgGの測定を行ったところ,日本の患者と同様,CD患者においてAgal-IgG値が有意に高値であった.【結論】レクチンELISAによるガラクトース欠損IgG(Agal-IgG)は,CD患者の新たなバイオマーカーとなり得る.
索引用語