セッション情報 シンポジウム13

消化器疾患における新規分子マーカー

タイトル S13-4:

ガスクロマトグラフィー質量分析を用いた血清メタボロミクスによる新規大腸がん診断システムの開発

演者 吉田 優(神戸大学消化器内科学)
共同演者 小林 隆(神戸大学消化器内科学), 東 健(神戸大学消化器内科学)
抄録 大腸がんの完治には,その早期発見が不可欠である.従来の簡便な大腸がん検査法として糞便の免疫学的便潜血反応検査や血液検査による腫瘍マーカー診断が挙げられるが,これらの検査で陰性であっても,大腸がんの発症を否定することはできない.これらのことから,健康診断でも利用でき,そして,高感度,かつ,高特異度を有する画期的な大腸がんスクリーニングシステムの開発が強く求められている.そこで,我々はガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)を用いた血清メタボローム解析により,新たな大腸がんスクリーニングシステムについて検討した.はじめに,トレーニングセットとして大腸がん患者60名,健常者60名の血清50 μlより抽出した親水性代謝物をGC/MSにより分析した結果,糖や糖アルコール,有機酸,アミノ酸などを含む131種類の代謝物を同定できた.次に,大腸がん患者と健常人の代謝物データを用いて統計学的評価を実施するとともに,代謝物の日内日間変動の有無なども考慮に入れることで,27種類の代謝物バイオマーカー候補を見出した.しかし,これらの代謝物には,感度と特異度の両方ともに高値を示すものはなかったため,続いて,マルチバイオマーカーによる評価の適応性について検討した.ステップワイズ‐多重ロジスティック回帰分析を実施した結果,4種類の代謝物に基づいた大腸がん診断予測式を確立できた.この予測式は,感度が85.0%,特異度が85.0%と,高い診断精度を有していた.バリデーションセットの分析結果をこの予測式に当てはめた場合においても,高い精度を有することが確認できた.さらに,構築した大腸がん診断予測式は,腫瘍マーカーであるCEAやCA19-9による発見の難しいステージ0やステージ1といった早期大腸がん患者においても,高い感度を保つことを明らかにし,鋭敏な大腸がんスクリーニング検査法としての可能性を見出すことができた.
索引用語