セッション情報 シンポジウム13

消化器疾患における新規分子マーカー

タイトル S13-5:

KRAS,BRAF,PIK3CA変異と有意な相関を示すmicroRNAの同定を目指したアレイシステムによる網羅的検討

演者 能正 勝彦(札幌医科大学内科学第一講座)
共同演者 山本 博幸(札幌医科大学内科学第一講座), 篠村 恭久(札幌医科大学内科学第一講座)
抄録 【目的】近年,抗EGFR抗体薬の効果が報告され,本邦においてもKRAS野生型転移性大腸癌の治療薬として使用されている.またBRAF,PIK3CA遺伝子は,KRASと同様にEGFRを介したRAS-RAF signaling,PI3K/Akt pathwayでそれぞれ重要な働きをする遺伝子であり,それらの変異症例では,KRAS遺伝子が野生型であっても抗EGFR抗体薬の治療効果が期待できないと報告されている.一方,ノンコーディングRNAのひとつであるmicroRNA(miRNA)の発現異常は大腸癌で報告されており,新規分子マーカーとして有望であると考えられる.しかしながら大腸腫瘍において,それらのpathwayにおけるmiRNAの働きは明らかにされていない.今回,我々は1,000例を超える大腸腫瘍を用いてKRAS,BRAF,PIK3CA変異症例で特異的な発現をきたすmiRNAを同定することを目的とする.【方法】内視鏡的,外科的に切除された1,165症例の大腸腫瘍(大腸腺腫,癌)を対象にパイロシークエンス法でKRAS,BRAF,PIK3CA遺伝子変異を解析した.またアレイシステムを用いてそれらのmiRNAを網羅的に解析し,遺伝子変異との相関を検討した.【成績】アレイシステムによる解析の結果,大腸腫瘍は遺伝子変異の有無によって異なるクラスターに分類された.また正常粘膜では発現がみられず,腫瘍でのみ発現が亢進していたmiRNAがいくつか同定された.それらのmiRNAの中でKRAS,BRAF,PIK3CA,いずれか一つの遺伝子で変異が認められた症例で発現が有意に亢進しているmiRNAを我々は同定した.臨床病理学的因子を変数として加えた多変量解析でもそのmiRNAの発現亢進はそれら遺伝子変異の独立した予測因子であり,不良な予後とも相関を認めた.【結論】今回,我々はアレイシステムによる解析の結果,RAS-RAF signaling,PI3K/Akt pathwayの活性化において重要な役割を果たすと思われるmiRNAを同定した.このmiRNAは大腸癌の予後予測や分子標的薬剤の感受性予測の新規分子マーカーとして期待される.
索引用語