セッション情報 | シンポジウム13消化器疾患における新規分子マーカー |
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タイトル | S13-6:HCV感染者血清中に出現する補体C4断片は抗ウイルス治療効果の分子マーカー候補である |
演者 | 馬渡 誠一(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学) |
共同演者 | 宇都 浩文(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 坪内 博仁(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学) |
抄録 | 【目的】C型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染成立には,HCVにより産生されるウイルス蛋白が,HCV感染に対する宿主免疫応答に対し抑制的に作用することがその一因と考えられる.一方我々は,HCV持続感染者の血清プロテオミクスで,補体C4の断片が血清中に増加していることを見出した.本研究では,補体C4断片化とHCV由来蛋白との関連,および血清中C4断片の臨床的有用性を明らかにすることを目的とした. 【方法と成績】1)補体C4とNS3/4Aプロテアーゼを混合すると,C4単独やNS3/4Aプロテアーゼ単独群には見られない約17kDaと15kDaの蛋白断片がSDS-PAGEで検出され,この断片はHCVコア蛋白やHCV NS5A蛋白では出現しなかった.また,NS3/4AプロテアーゼによるC4断片出現は,セリンプロテアーゼ阻害剤(VX-950)により抑制された.2)感作羊赤血球を用いた溶血試験にて,NS3/4Aプロテアーゼは濃度依存的にC4活性を低下させた.また,この活性低下はVX-950により阻害された.3)血清をアセトン沈降後,C4ポリクローナル抗体を用いてwestern blotを行うと,約17kDaのペプチドがHCV感染者血清中に多く存在し,HBV感染者や健常者血清中にはほとんど検出しなかった.4)ペグインターフェロン+リバビリン併用療法を施行したC型慢性肝炎患者の治療経過中の血清を,上記と同様の方法で解析すると,約17kDaのC4断片は著効患者では治療経過中に有意に減少するのに対し,無効患者では治療前と治療中で有意差はなかった.また,約17kDaのC4断片はHCV-RNAが陰性化する時期に遅れて消失する傾向で,再燃例では消失しない症例が存在した. 【結論】HCV NS3/4AプロテアーゼはC4を切断することにより,補体の活性化を阻害し,宿主免疫応答を減弱させることで持続感染を維持する可能性がある.また,HCV感染患者血清中に認められた約17kDaのC4断片は,インターフェロン治療効果と関連し,抗ウイルス治療時の新しい分子マーカーとなる可能性がある. |
索引用語 |