セッション情報 シンポジウム13

消化器疾患における新規分子マーカー

タイトル S13-8:

肝細胞癌診断における高感度AFP-L3測定法の臨床的有用性

演者 田村 康(新潟大学消化器内科学)
共同演者 須田 剛士(新潟大学消化器内科学), 青柳 豊(新潟大学消化器内科学)
抄録 【目的】AFP-L3は肝細胞癌(HCC)の診断に用いられている.近年,AFP-L3の高感度測定法が開発され臨床応用されている.今回,我々は,これまでAFP-L3評価困難であったAFP低濃度症例(<20ng/ml)に対する,HCC診断における高感度化AFP-L3測定の意義について検討した.また,外科切除された83例の血清AFP-L3と肝細胞癌の切除組織所見との関連性を評価したので報告する.
【方法】(1)AFP濃度20ng/ml未満のHCC症例163例と慢性肝疾患症例319例の計482例を対象とした.血清中AFP,AFP-L3を従来法ならびに高感度法で測定し,AUROC面積の比較,高感度法AFP-L3の感度・特異度,腫瘍進展早期症例における高感度法AFP-L3の測定感度を評価した.(2)肝細胞癌83例の切除標本における,肝癌組織分化度,血管浸潤などの肝細胞癌の切除組織所見と術前AFP,AFP-L3,PIVKA-IIの関連性を評価した.
【結果】(1)482症例中,従来法でAFP-L3評価可能症例(測定感度以上)は16例のみであったのに対し,高感度法では166例と評価可能症例は約10倍に増加した.AUROCは従来法0.721に対し,高感度法では0.831に向上していた.カットオフ値10%の場合,従来法での陽性率は4.9%であったのに対し,高感度法は20.9%,更にカットオフ値を7%に引き下げることにより,特異度を90%以上に保ったまま陽性率が38.7%まで上昇した.腫瘍stage I,IIのHCC症例108例中,カットオフ値を7%とすると従来法ではAFP-L3陽性率6%であるのに対し,高感度法は58%と上昇を認めた.(2)いずれのマーカーもHCCの分化度が低くなると陽性率が上がる傾向を示したが,高分化HCCでは,従来法AFP‐L3は14.3%のみに陽性を示したのに対し,高感度法は35.7%が陽性であり,高分化HCC症例に対する診断能向上を確認した.
【結論】AFP-L3は高感度化により低濃度AFP領域でのフコシル化評価が可能となり,HCC早期診断における有用性が飛躍的に向上した.また,高分化HCC症例に対する高感度AFP-L3の診断能向上も確認した.
索引用語