セッション情報 シンポジウム13

消化器疾患における新規分子マーカー

タイトル S13-9:

新しいPIVKA-II分画(NX-PVKA)の肝細胞癌患者予後との関連

演者 竹治 智(愛媛大学大学院医学系研究科先端病態制御内科学)
共同演者 廣岡 昌史(愛媛大学大学院医学系研究科先端病態制御内科学), 日浅 陽一(愛媛大学大学院医学系研究科先端病態制御内科学)
抄録 【目的】P-11及びP-16抗体によって同定する新しいPIVKA-II(NX-PVKA)は,MU-3抗体によって同定される従来のPIVKA-IIとは分画が異なる.従来のPIVKA-IIはN末端に9から10個のグルタミン酸(Glu)残基を有するが,NX-PVKAはGlu残基数が異なり,ワーファリンにより増加する分画に近似する.新しいPIVKA-II分画であるNX-PVKAの臨床的意義,特に肝細胞癌患者の生存期間との関連を中心に検討した.【方法】対象は2001年から2010年の間に愛媛大学病院に入院した肝細胞癌患者197名.肝細胞癌治療前に採取し保存した血清を用い,NX-PVKA,従来のPIVKA-II,NX-PVKA-R(PIVKA-II/NX-PVKA),AFP,AFP-L3の各腫瘍マーカーと生存曲線について検討した.また,各腫瘍マーカーについて肝機能検査,臨床背景因子,腫瘍因子を比較し,病態との関連について検討した.生存分析及びリスクスコアは,ぞれぞれ,Kaplan-Meier法及びCox比例ハザードモデルにより解析した.【結果】NX-PVKAは生存曲線と関連し,NX-PVKA≧100 mAU/mLの患者は,NX-PVKA<100 mAU/mLの患者に比して有意に予後不良であった(p=0.0002).NX-PVKA高値例(≧100 mAU/mL)は,肝細胞癌病期別,Child-Pugh分類別でも有意に予後不良であった.多変量解析において,NX-PVKA値は最も強く肝細胞癌患者の予後に関連する腫瘍マーカーとして抽出された(ハザード比=81.32,p<0.0001).またNX-PVKA値は,肝細胞癌患者の血小板数,プロトロンビン時間や腫瘍因子(最大腫瘍径,腫瘍個数,門脈浸潤の有無)と有意に関連した.全生存期間に対して有意に寄与する血液検査項目として,NX-PVKAの他にアルブミン,γ-GTP,ヒアルロン酸等が抽出され,これらの項目を用いて肝細胞癌患者の予後予測モデルを作成した.同モデルは肝細胞癌患者の生存期間と有意に相関した(p<0.0001).【結論】NX-PVKAは,肝細胞癌患者の予後を推定しうる腫瘍マーカーである.NX-PVKAは腫瘍因子とともに肝予備能を反映し,肝細胞癌患者の全生存期間の予測式に利用できる.
索引用語