セッション情報 シンポジウム13

消化器疾患における新規分子マーカー

タイトル S13-10:

肝細胞癌の治療抵抗性を担う新規分子マーカーの解析

演者 直江 秀昭(熊本大学消化器内科学)
共同演者 田中 基彦(熊本大学消化器内科学), 佐々木 裕(熊本大学消化器内科学)
抄録 蛋白質の微細な構造・機能変化を捉えて病態との関連を明らかにするとともに,その成果をデータベース化する研究は「プロテオミクス」と呼ばれ,近年注目を浴びている.我々は肝癌の細胞死抵抗性を担う分子群を明らかにするために,プロテオミクスと遺伝子発現解析,ならびにそれらを統合したpathway解析を行った.具体的には,ヒト肝癌細胞株を対象に細胞死誘導刺激前後のcell lysateを回収し,2次元電気泳動にて蛋白質発現ならびに翻訳後修飾の一つである燐酸化の変化を解析し,最終的には質量分析計にて燐酸化蛋白質を同定した.一方,DNAマイクロアレイ解析により遺伝子発現の差異を網羅的に検討し,これらのデータを統合したpathway解析により細胞死抵抗性を担う候補分子群を抽出した.燐酸化が有意に変化した蛋白質の多くは細胞骨格関連蛋白質や分子シャペロンであった.またpathway解析からは,細胞死誘導刺激で燐酸化が変化する蛋白質の一部が,p53やMDM2等の細胞死関連遺伝子を誘導することが示された.それらの中から,我々はアポトーシスや細胞分裂に関連しているnucleophosmin(NPM)に着目した.p-NPM(燐酸化NPM)と細胞死抵抗性には相関が認められ,NPMのsiRNAにより細胞死抵抗性が減弱した.一方,NPMならびにp-NPMは,ヒト肝癌組織において非癌部より発現が有意に亢進し,またNPMの発現は非癌部の活動性が高い症例で高い傾向にあった.加えてp-NPM高発現例では再発までの期間が有意に短縮されており,NPM,とりわけp-NPMはヒト肝癌の形質と密接な関連が示唆された.さらに肝癌患者血清を用いて自動化蛋白質2次元電気泳動装置による解析を行ったところ,血清中NPMは燐酸化の程度の異なる複数のスポットとして認識され,NPMならびにその燐酸化の変化が,肝癌の診断や予後予測における新たなマーカーとなる可能性が示唆された.
索引用語