セッション情報 シンポジウム13

消化器疾患における新規分子マーカー

タイトル S13-13:

膵癌組織で異常高発現するノンコーディングサテライトRNAを応用した膵癌早期診断への試み

演者 岸川 孝弘(東京大学消化器内科)
共同演者 大塚 基之(東京大学消化器内科), 小池 和彦(東京大学消化器内科)
抄録 【目的】膵癌の予後改善のためには,効率的な検出法の確立が希求されているが,現存の方法を工夫するだけでは抜本的な改善は見込みにくい.近年の次世代RNAシークエンス法の発展によって,ノンコーディングRNAとよばれる機能的RNA群が生命機能に重大な役割を果たしていることが次々と明らかになり,分子生物学に一大新領域を築きつつある.このノンコーディングRNAの一種であるサテライト配列由来RNAが膵癌組織で異常に高発現していることに着目し,膵癌の早期発見につながる分子マーカーとなり得るか検討をおこなった.【方法】1)当院で外科切除された膵癌患者組織及び膵炎,膵癌患者から得られた組織アレイを用いてサテライトRNAの発現をRNA in situ hybridization法で検討した.2)膵細胞のマウス移植モデル,および膵癌マウスモデルを使用して,サテライトRNAの発現分布・検出法を検討した.【結果】1)検索した膵癌切除組織およびアレイ上の膵癌組織においてサテライトRNAの高発現を認めた.しかも,非担癌患者由来の膵組織ではこのサテライトRNAは検出されなかった.特徴的なことに,サテライトRNAの発現は癌部ではなくその周囲の背景腺房組織に強く認められる傾向にあった.2)担癌状態にしたマウスでは病理的に転移がないにも関わらず,膵癌組織部分だけでなく他組織にもサテライトRNAが発現していた.この異常発現は健常マウスでは認められないことから,担癌であることが必須と考えられた.3)このサテライトRNAを末梢血からPCR法で検出できる系を検討した.【結論】膵癌では,従来知られていなかったサテライトRNAが異常に高発現しており,しかもその発現は末梢血にも反映されている可能性が明らかとなった.今回確立した末梢血からの検出法をヒトに応用することで,膵癌の早期検出のための新たな分子マーカーとなり得ると考える.
索引用語