セッション情報 シンポジウム14

消化器領域における幹細胞研究の進歩

タイトル S14-3:

pSmad2/3L-Thrの消化管幹細胞マーカーとしての検討とその応用

演者 高橋 悠(関西医科大学消化器肝臓内科)
共同演者 福井 寿朗(関西医科大学消化器肝臓内科), 岡崎 和一(関西医科大学消化器肝臓内科)
抄録 【目的】Smad2/3蛋白はTGF-β受容体でC末端のSer残基がリン酸化され,ERK,JNK等MAPキナーゼやCDK4にてlinker部がリン酸化される.抗pSmad2/3L-Thr抗体にて認識されるリン酸化Smad2/3蛋白のリン酸化部位Thr220/Thr179はCDK4にてリン酸化され,細胞増殖に関わる.pSmad2/3L-Thr陽性細胞(以下陽性細胞)を同定し,幹細胞マーカーとしての可能性と,その応用について検討する.【方法】マウス食道,胃,小腸,大腸を用いて,陽性細胞を蛍光免疫染色にて同定し,各上皮細胞マーカーや,幹細胞マーカーと共に免疫染色を行った.消化管炎症モデルマウスを作成し,pSmad2/3L-Thr発現を正常粘膜と比較し,上皮再生マーカーとしての可能性を確認した.陽性細胞がslow-cycling細胞であることを確認するため,マウスに投与したBrdUが核内に長期残存する細胞かを検討した.【結果】陽性細胞は,食道では基底層に存在し,p63,CDK4ともに陽性であった.胃では峡部に存在し,cytokeratin 8陽性,DCAMKL1陽性細胞はごく近傍に存在していた.小腸ではパネート細胞の直上部と一部パネート細胞間に,大腸では腺底部に認められた.小腸,大腸ともCDK4陽性,Chromogranin A陰性でありDCAMKL1陽性細胞の近傍に存在し,小腸の一部と大腸の大部分の陽性細胞はLgr5陽性域に認められた.小腸の大部分の陽性細胞はLgr5陽性域の直上であった.小腸ではMusashi-1陽性であった.HE標本にて陽性細胞の部位を再確認し,未分化な細胞であると考えられた.BrdU投与実験では長期残存し,slow-cyclingな幹細胞である可能性が示唆された.炎症モデルでは,粘膜の過形成,Ki67陽性細胞の増加がみられ,陽性細胞も有意に増加した.【結論】pSmad2/3L-Thr陽性細胞はslow-cyclingな幹細胞である可能性が示唆され,粘膜再生において重要な意義を有すると考えられた.今後,ヒト消化管癌や炎症性腸疾患における発現を検討し,癌幹細胞,粘膜再生マーカーとしての意義を検討し,臨床応用を考えている.
索引用語