セッション情報 シンポジウム14

消化器領域における幹細胞研究の進歩

タイトル S14-5:

small GTPase Cdc42は腸管幹細胞の恒常性に必須であり,腫瘍形成を促進する

演者 阪森 亮太郎(大阪大学消化器内科学)
共同演者 ガオ ナン(ラトガース大学), 竹原 徹郎(大阪大学消化器内科学)
抄録 【目的】腸管上皮細胞はcryptに存在する自己複製と多分化能を有する幹細胞(ISC)により持続的に再生・補充される.近年Lgr5+ISCの細胞系譜追跡により単一の幹細胞のクローンがcryptの恒常性を保つことが報告され,またPaneth細胞が腸管上皮幹細胞のnicheを構成することが明らかとなるなど,腸管上皮幹細胞研究は飛躍的に進んでいる.今回我々はsmall GTPaseであるCdc42が腸管上皮幹細胞の恒常性を制御し,またWntシグナルを介し腸管腫瘍形成に関与することを明らかとしたので報告する.【方法】ISCの解析にはCdc42L/L;VillinCreマウス,Cdc42L/L;Lgr5CreER-EGFP-RosaYFPマウスを用い,またAPCmin/+マウス,Catnb lox(ex3)/+マウスをCdc42L/+;VillinCreマウスと交配させ腫瘍形成におけるCdc42の関与を検討した.【結果】Cdc42L/L;VillinCreマウスでは,幹細胞マーカーであるLgr5とOlfm4,Paneth細胞マーカーのDefa5とLysozymeの発現低下を認めた.Cdc42をノックアウトしたLgr5+ISCの細胞系譜を追跡するため,Cdc42L/L;Lgr5CreER-EGFP-RosaYFPマウス及びコントロールマウスにTamoxifenを投与し,Lgr5+ISC及びその子孫細胞をラベルした.Cdc42をノックアウトするとLgr5+ISCからPaneth細胞への分化が阻害され,Cdc42ノックアウトLgr5+ISCからの子孫細胞はvilliにおいてclusterを形成した.また免疫染色によりCdc42ノックアウトLgr5+ISCにおいてmitosis増加を認め,上皮細胞形成異常をきたし,アポトーシスを誘導することが示された.さらに腫瘍モデルマウスのCdc42活性を低下させるとWntシグナルは抑制され,腫瘍形成は有意に低下した.またWntシグナルはCdc42を活性化させた.【結論】Cdc42は腸管幹細胞の恒常性に必須であり,さらに大腸癌の治療ターゲットになりえる.
索引用語