セッション情報 シンポジウム14

消化器領域における幹細胞研究の進歩

タイトル S14-6:

ラット大腸発癌モデルにおける外因性骨髄間葉系幹細胞の時相的影響について

演者 勝野 貴之(大阪市立大学消化器内科学)
共同演者 越智 正博(明治橋病院内科), 富永 和作(大阪市立大学消化器内科学)
抄録 【目的】自己複製能や多分化能を有する骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)は,自身の悪性転化,腫瘍の増大・転移への関与が報告されている一方,腫瘍抑制作用の報告もある.しかし,腫瘍発生時期前後におけるBM-MSCの外因性投与による影響については不明である.【方法】既報に従い,F344ラット(7週齢雌)に対し第1週目に1-2 dimethylhydrazine(40mg/kg)を3度皮下投与し,第2週目に1%dextran sodium sulfateを一週間自由飲水させ発癌モデルを作成した.BM-MSCはラットの大腿骨・脛骨より採取培養し,5継代後に供した.1)予備検討より,腫瘍結節が肉眼的に全く認められない第5週目と,出現し始める第15週目に対して,各々の時期にBM-MSCを経静脈的に投与し(4×106 cells/body),第25週目で腫瘍結節の個数・総体積を検討した.2)大腸粘膜への集積には,PKH26でラベルしたBM-MSC投与3日後と35日後の大腸粘膜を蛍光顕微鏡にて評価した.3)第5週目にBM-MSCを投与したラットにおいて,前癌病変であるaberrant crypt foci(ACF)の個数を,第7週目と第10週目に評価した.【結果】1)第5週目投与群では,非投与群と比較し腫瘍結節の個数・総体積はいずれも有意に減少していた(p<0.01).しかし,第15週目投与群では,腫瘍結節の個数・総体積ともに有意差は認めなかった.2)BM-MSCは投与後3日,35日ともに大腸粘膜に存在していることが確認された.3)BM-MSC投与群では非投与群に比べ,第7週目,10週目のACFの個数はいずれも有意に減少していた(p<0.01).【結論】ラット大腸化学発癌モデルにおいては,BM-MSC投与はACF発生の抑制とその後の腫瘍発生を抑制したが,腫瘍結節出現後の投与では明らかな影響を与えないことが示唆された.
索引用語