セッション情報 シンポジウム14

消化器領域における幹細胞研究の進歩

タイトル S14-9:

肝前駆細胞分化におけるMETおよびEGFRの役割

演者 北出 光輝(奈良県立医科大学第3内科)
共同演者 Thorgeirsson Snorri(米国国立衛生学研究所), 福井 博(奈良県立医科大学第3内科)
抄録 【目的】肝前駆細胞(HPC)の活性化や分化誘導にHepatocyte Growth Factor(HGF)-MET,およびEpithelial Growth Factor(EGF)-EGFRのシグナル伝達が重要な役割を果たしていることが報告されている.しかし,HPC分化における各シグナルの役割は未だ明らかにされていない.今回我々は,conditional knockout modelを用いて各増殖因子シグナルの役割につき検討を加えた.【方法】HPC細胞株はMetfl/flおよびEgfrfl/flマウス肝よりFACS sortで分離したprimary HPCをcollagen-coat培地にて増殖,クローニングすることによって得た.各細胞株のMET,EGFRノックアウトはCre-loxシステムにより行い,得られた各HPC細胞株(Met-/-,Egfr-/-)を用いて肝細胞(HC)および胆管上皮細胞(BEC)への分化能を検討するとともに,両者のシグナル伝達に関しても検討を加えた.【結果】HGF,EGF刺激時のERK1/2活性はMet-/-,Egfr-/-両細胞株において共に著明に低下した.また,AKT,STAT3活性およびHCへの分化はMet-/-においてEgfr-/-に比し強く阻害されていた.さらに,Metfl/flにAKT,STAT3阻害剤を添加するとMet-/-と同様にHCへの分化が抑制され,逆にMet-/-へMETを再導入することでHCへの分化能が回復したことよりMETはAKT,STAT3を介してHC分化に関与することが示唆された.一方,BECへの分化はEgfr-/-でより強く抑制された.Egfr-/-ではNotch1発現が著明に低下しており,EGFRの再導入によりNotch1発現およびBECへの分化能が回復したことからEGFRはNotch1を介してBEC分化に重要な役割を果たしていると考えられた.【結論】METとEGFRがそれぞれ独自のシグナルを介して肝前駆細胞の分化を規定していることが明らかとなった.各シグナルの発現調節により効果的な分化誘導が可能になることが示唆され,HPCを用いた肝再生医療に寄与し得ると考えられる.
索引用語