セッション情報 シンポジウム14

消化器領域における幹細胞研究の進歩

タイトル S14-10:

肝組織幹細胞および肝癌幹細胞における表面マーカーCD133の意義

演者 末次 淳(岐阜大学医学部消化器病態学)
共同演者 森脇 久隆(岐阜大学医学部消化器病態学)
抄録 組織・器官には,自己複製能と増殖能力を保持している幹細胞が存在しており,増殖・分化することにより組織機能・形態が維持されている.組織・器官を構成する細胞は組織幹細胞,前駆細胞,成熟細胞に分化し,肝臓においても幹細胞システムが存在している.我々は,骨髄のみをGFP細胞に置換したC57/BL6マウスにヘム蛋白合成阻害剤である3,5-diethoxycarbonyl-1,4-dihydrocollidine(DDC)投与し,マウスにおいてoval cellを誘導し,GFP骨髄細胞の肝前駆細胞分化を検討した.GFP骨髄細胞はDDC投与4週間後肝臓内に22.1%占め,これらの細胞はAlbumin,CK19共に陽性で肝・胆管細胞いずれも分化する能力を持ち,肝幹細胞の原型と考えられた.これらGFP陽性骨髄細胞のうちCD133陽性細胞は26.9%占め,CD133陽性細胞が陰性細胞に比べ,mRNAおよび蛋白レベルでAlbumin,CK19共に陽性であることを確認した.慢性炎症状態の肝臓では,CD133陽性骨髄は,肝前駆細胞に分化すると考えられたため,CCL4誘導肝繊維化モデルに移植したところ,CD133陰性細胞に比べ繊維の改善(P<0.01)とalbuminの上昇を認めた.CD133陽性骨髄GFP細胞の肝臓化への生着および血管内遊走を生体マウスで動画としてとらえることもできた.また,肝癌細胞においても同様,幹細胞能力と癌形成能を併せ持つ癌幹細胞より癌が形成・維持されているといわれている.今まで我々は,肝癌cell line(Huh7,HepG2)において癌幹/前駆細胞の存在について検討しており,CD133陽性細胞が癌組織におけるhierarchy上位に位置する細胞であると報告した.さらに,蛍光タンパク質(GFP,RFP)を肝癌細胞に導入し,肝癌幹細胞の抗がん剤耐性を証明した.当日は,癌幹細胞と組織幹細胞における表面マーカーCD133の観点から共通性・相違性について報告する.
索引用語