セッション情報 シンポジウム14

消化器領域における幹細胞研究の進歩

タイトル S14-13:

CD274(-)細胞分画は胆管癌細胞株においてがん幹細胞様の性質を有する

演者 玉井 恵一(宮城県立がんセンター研究所がん先進治療開発研究部)
共同演者 菅村 和夫(宮城県立がんセンター研究所発がん制御研究部), 田中 伸幸(宮城県立がんセンター研究所がん先進治療開発研究部)
抄録 【目的】がん組織はヘテロな細胞集団から構成されており,一部の悪性細胞が「がん幹細胞」として造腫瘍性を持つことも多い.がん幹細胞は治療抵抗性を示すことから,難治性がんのの治療標的として注目されている.実際に,胆管癌におけるがん幹細胞は不明な点が多い.我々は胆管がん幹細胞に関連する新規マーカーを探索した.【方法】胆管癌細胞株RBEを用いて,これまで大腸がん等で確立されているがん幹細胞マーカー(CD133/CD90)を用いて分画した.超免疫不全マウス(NOG)の皮下に接種し,造腫瘍能を検討した.がん幹細胞を含む分画について,マイクロアレイを用いて発現に有意差のある遺伝子を探索した.候補タンパクの発現を基に細胞をさらに分取し,がん幹細胞に特徴的な形質を解析した.【結果】CD133(-)CD90(-)分画は,CD133(+)CD90(+)分画に比し造腫瘍能が有意に高かった.マイクロアレイ解析を行ったところ,CD274の発現が顕著に低下していた(3.6倍).次いで細胞集団をCD274(+)/(-)で分画し,造腫瘍能を検討したところ,CD274(-)分画の造腫瘍能が有意に高かった.CD274(-)分画はALDH活性が高く,ROS産生も低下していた.細胞周期解析を行ったところ,CD274(-)分画はG0/G1に留まっていることが分かった.幹細胞遺伝子をReal-time PCRで調べたところ,Sox2,Nanog,Oct3/4の発現が亢進していた.一方,CD274(-)分画は遊走能が低下していた.【考察】胆管癌細胞株においてCD274(-)分画は,がん幹細胞の性格を持つことが明らかになった.細胞周期・Migration assayの結果から,CD274(-)分画はdormantな状態のがん幹細胞に類似していると考えられた.以上の結果から,CD274は新規の胆管がん幹細胞マーカーであり,胆管がんの悪性度を解析する有用なツールになる可能性が高い.
索引用語