セッション情報 ワークショップ6(消化吸収学会・消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

病態栄養からみた肝・胆・膵疾患-治療への応用-

タイトル 肝W6-20:

分岐鎖アミノ酸のHCV関連インスリン抵抗性とPigment Epithelium-derived Factorにおよぼす影響

演者 川口 巧(久留米大・消化器疾患情報DELIMITER久留米大・消化器内科)
共同演者 山岸 昌一(久留米大・糖尿病性血管合併症病態・治療学), 佐田 通夫(久留米大・消化器疾患情報DELIMITER久留米大・消化器内科)
抄録 【目的】インスリン抵抗性は、C型肝硬変患者に高頻度に見られる合併症であり、肝発がんや血管新生に関わる重要な病態である。基礎的研究から、分岐鎖アミノ酸(BCAA)のインスリン抵抗性改善作用が示唆されているが、その臨床的効果や機序は未だ不明である。近年、肝細胞に強発現している血管新生抑制分子pigment epithelium-derived factor (PEDF)は、インスリン抵抗性を改善することが明らかとなっており、本研究の目的は、C型肝硬変患者におけるBCAAのインスリン抵抗性とPEDFにおよぼす影響を検討することである。
【方法】インスリン抵抗性指数(HOMA-IR)2.5以上のC型肝硬変患者(n=46;年齢 66.3 ± 2.1; HOMA-IR 3.5 ± 1.4)を対象とし、BCAA顆粒製剤12g/日を12週間連日投与した。BCAA投与による空腹時血糖、HbA1c、空腹時IRI、HOMA-IR、血清PEDF濃度の変化をWilcoxonの符号順位検定にて検討した。また、BCAA投与によるHOMA-IRと血清PEDF濃度の変化量の相関についてSpearmanの順位相関係数にて検討した。
【成績】対象者全員が本試験を完遂した。BCAA投与によりBMI、空腹時血糖値、HbA1c値に有意な変化は認められなかったが、空腹時IRIとHOMA-IRは有意に低下した(空腹時IRI, 13.5 ± 4.9 vs. 12.1 ± 3.6, p=0.0160; HOMA-IR, 3.5 ± 1.4 vs. 3.0 ± 0.9, p=0.0384)。また、BCAA投与により血清PEDF濃度は有意に上昇した(12.9 ± 3.6 vs. 14.2 ± 4.7, p=0.0451)。さらに、BCAA投与後のHOMA-IRの変化量はPEDFの変化量と負の相関を示した(rho = -0.564, p=0.0002)。
【結論】本研究により、BCAAは、C型肝硬変患者のインスリン抵抗性を改善することが明らかとなった。また、BCAAは血清PEDF濃度を上昇させただけでなく、血清PEDF濃度はインスリン抵抗性と相関したことから、BCAAはPEDFを介してインスリン抵抗性を改善する可能性が示唆された。
索引用語 インスリン抵抗性, 分岐鎖アミノ酸