セッション情報 |
シンポジウム14
消化器領域における幹細胞研究の進歩
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タイトル |
S14-15:新しい培養技術による癌幹細胞を標的としたオーダーメード治療の可能性
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演者 |
林 義人(大阪大学消化器内科) |
共同演者 |
近藤 純平(大阪大学消化器内科), 竹原 徹郎(大阪大学消化器内科) |
抄録 |
近年,固形腫瘍においても癌細胞の幹細胞的性質の重要性が注目されている.幹細胞性は,高い腫瘍形成性,化学療法抵抗性と関連しており,癌の転移・再発過程において重要な働きをしていると考えられている.そのため,癌細胞の幹細胞性維持に関わる分子を同定し,それに対する分子標的治療を行うことは,癌の根治を目指した抗癌治療に必須と考えられる.我々は,ヒト大腸癌由来培養細胞株を,無血清培地で浮遊培養してspheroidを形成させることにより幹細胞的な性質が増強されたることを用い,幹細胞関連遺伝子発現・発癌関連シグナル伝達を網羅的に解析することにより,その生存・未分化維持・抗癌耐性に関わるkey moleculeの探索を行ってきた.LS174T細胞は,spheroid形成に伴いcyclooxygenase-2の発現が亢進し,PGE2/PKAの活性化を介してROS産生が抑制され,抗癌剤に対し抵抗性を示すようになること,WiDr細胞は,spheroid形成によりIL-6産生が亢進し,Notch3発現が誘導され抗癌耐性が亢進すること,さらに其々,cyclooxygenase-2阻害剤,IL-6抗体によりLS174T,WiDrのspheroid形成能・抗癌剤耐性が減弱することから,個々の細胞内分子機構の検討により癌細胞の幹細胞的性質を抑制できる可能性を明らかにしてきた.一方,我々は生検等で採取した大腸癌組織から95%以上の高率に高度に純化された腫瘍上皮細胞(Cancer Tissue-Originated Spheroids)を分離し,in vitro,in vivoにおいて遺伝子的・組織学的に元の腫瘍の特徴を維持したまま培養する方法を開発した(Kondo J, et al. PNAS, 2011).これらの方法を用いることにより患者個々の癌細胞を用いた細胞生物学的・分子生物学的検討が可能となり,癌細胞の幹細胞性を標的としたオーダーメード分子標的治療の開発が可能になると考えられる. |
索引用語 |
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