セッション情報 パネルディスカッション1

消化器領域におけるIgG4関連疾患の診断と治療~包括的診断基準を受けて~

タイトル PD1-1:

IgG4関連疾患の病理診断:消化器領域疾患の診断基準と包括的診断基準における考え方

演者 能登原 憲司(倉敷中央病院病理検査科)
共同演者
抄録 IgG4関連疾患(IgG4-RD)の病理所見に関して,1)組織形態が特徴的であること,2)臓器により組織形態に違いがあること,3)多数のIgG4陽性細胞の出現は特徴的ではあるが,特異的ではないこと,がコンセンサスとなりつつある.1型の自己免疫性膵炎(AIP)やIgG4関連硬化性胆管炎(IgG4-SC)では,花筵状線維化や閉塞性静脈炎といった特徴的な組織像が出現しやすく,そのため1型AIPの国際コンセンサス診断基準や本邦臨床診断基準2011,IgG4-SCの本邦臨床診断基準2012では組織像を重視した組織診断基準が採用され,さらに組織所見のみでの確診を可能としている.一方,本邦のIgG4-RD包括診断基準2011では,臓器によっては出現頻度の低い花筵状線維化や閉塞性静脈炎を組織像の項目から削除し,免疫染色を重視した組織診断基準(著明なリンパ球,形質細胞浸潤と線維化+IgG4/IgG陽性細胞比≧40%+IgG4陽性形質細胞>10/hpf)が採用され,さらに確診とするためには臨床的所見,血液所見を満たすことが求められている.最近公表された,IgG4-RDの病理診断についての国際的合意文書(Consensus Statement)では,1型AIPやIgG4-SCと同様,花筵状線維化や閉塞性静脈炎といった組織像が重視されており,IgG4の免疫染色のみでIgG4-RDを診断するべきでないことが強調されている.IgG4の免疫染色については,臓器ごとに異なる,より厳格な基準が提唱されている.ここには,臓器によってはIgG4関連病変の概念がいまだ明確でないものや,鑑別すべき疾患の幅が広いものもあり,概念の無秩序な拡大を防ぐためにも基準の厳格化が求められたという事情がある.Consensus Statementはさらに,診断には臨床像が必須という立場をとり,病理所見のみでの確診を認めていない.このように,IgG4-RDに関連するさまざまな診断基準が提唱されているが,その中での病理所見の扱いには違いがあるのが実情である.本講演ではその内容や,背景にある考え方について解説したい.
索引用語