セッション情報 パネルディスカッション1

消化器領域におけるIgG4関連疾患の診断と治療~包括的診断基準を受けて~

タイトル PD1-3[追加]:

自己免疫性膵炎臨床診断基準と包括的診断基準の有用性と問題点

演者 鷹取 元(金沢大学消化器内科)
共同演者 加賀谷 尚史(金沢大学消化器内科), 金子 周一(金沢大学消化器内科)
抄録 【目的】自己免疫性膵炎・IgG4関連疾患の診断において問題となる非典型例は生検やステロイド診断投与を要する.今回,自己免疫性膵炎臨床診断基準とIgG4関連疾患包括的診断基準の有用性と問題点を検討した.【対象と方法】1995年より現在までに,当科および関連施設で自己免疫性膵炎・IgG4関連消化器病変と診断された85例(平均63.0歳,男女比70:15)を対象とした.統計学的解析にはχ2乗検定を用いた.【成績1】血清IgG4値を測定された70例を自己免疫性膵炎診断基準2011にあてはめ,手術後の病理診断をのぞいた診断結果をretrospectiveに検討した.結果は確診(1)びまん型が39例(56%),(2)限局型が10例(14%),準確診3例(4%)であった.ステロイドオプションによる疑診は7例(10%)あり,合計59例(84%)が自己免疫性膵炎診断基準に適合した.診断基準外となった11例(16%)の内訳は非膵腫大例が10例(91%)を占めており,小さな膵腫瘤症例が目立った.【成績2】自己免疫性膵炎診断基準に適合した59例(適合群)と基準外となった11例(基準外群)を比較した.びまん性膵腫大は適合群の73%,基準外群の9%に認め,適合群で多かった(p<0.0001).血清IgG4の陽性率は適合群88%,基準外群72%,また膵外病変は適合群34%,基準外群27%で両群間に差はなかった.PET-CT施行20例で,膵外の集積を半数に認めたが,診断基準適合に差はなかった.治療として手術をされたのは適合群の5%,基準外群の36%であり,基準外群で有意に多かった(p<0.005).基準外群11例を包括的診断基準にあてはめた場合,術前に診断可能であったのは血清IgG4陽性かつ乳頭生検施行した1例のみであった.【結語】診断基準2011では84%が診断可能であった.一方で膵腫大を伴わない小さな膵腫瘤例では血清IgG4上昇や膵外病変があっても診断基準から外れる症例があった.また基準外になると外科手術となった症例が多かった.包括的診断基準を満たすためには組織診断が必要であり,非典型例では生検による診断の重要性が高くなっていると考えられた.
索引用語