セッション情報 パネルディスカッション1

消化器領域におけるIgG4関連疾患の診断と治療~包括的診断基準を受けて~

タイトル PD1-6[追加]:

消化器領域におけるIgG4関連疾患の診断と治療の現状と問題点

演者 西野 隆義(東京女子医科大学八千代医療センター消化器内科)
共同演者 土岐 文武(土岐内科医院), 白鳥 敬子(東京女子医科大学消化器内科)
抄録 【目的】IgG4関連疾患(以下IgG4-RD)の包括診断基準に基づく診断と治療の現状と問題点を検討した.【方法】2012年9月までに経験した包括診断基準で疑診以上のIgG4-RD 59例のうち,消化器領域病変を有した55例(M:F=38:17,平均年齢66歳)を対象とした.診断基準はIgG4-RD包括基準,自己免疫性膵炎診断基準2011年(AIP 2011)およびIgG4-SC 2012年を用いた.病変分布は膵,胆道,涙腺・唾液腺,胸部,腎・後腹膜の5病変に分類し,再燃および悪性腫瘍発生について臨床的検討を行った.【成績】1)包括診断基準における確診20例,準確診13例および疑診22例であり,準確診および疑診例はAIP 2011で全例確診と診断された.2)病変分布(重複あり)は,膵54例(M/F=37/17),胆道43例(33/10),涙腺・唾液腺19例(10/9),胸部10例(10/0),腎・後腹膜10例(7/3)であり涙腺・唾液腺病変は女性に多い傾向であった.3)十分な経過観察が可能な45例中再燃を17例(38%)に認めた.再燃予測因子として,単変量解析では経過中の血清IgG4値高値(p=0.003)および抗核抗体陽性(p=0.001)が有意な因子であり,多変量解析では血清IgG4値が有意であった.ROC解析でIgG4値270mg/dlをcut off値とすると感度76.5%,特異度88.5%(AUC=0.83)であった.4)悪性腫瘍は55例中10例(18%)に認めた.発生臓器(重複あり)は胃,肺各々3例,大腸2例,膵,十二指腸,肝および甲状腺が各々1例であり,IgG4-RD診断と同時が2例,診断2年以内2例,2年から5年以内3例および5年以降が3例であった.悪性腫瘍発生IgG4-RDでは単変量解析で,腎後腹膜病変あり(p=0.02)および罹患病変3病変以上(p=0.03)が有意な因子であった.血清IgG4値,PSL治療の有無は有意ではなかった.【結論】IgG4-RDは包括基準および臓器特異的診断基準を併せて用いることにより全例的確に診断可能であった.IgG4-RDの治療経過中に様々な臓器に悪性腫瘍が発症することがあり,今後その病態解明が重要であると考えられた.
索引用語