セッション情報 パネルディスカッション1

消化器領域におけるIgG4関連疾患の診断と治療~包括的診断基準を受けて~

タイトル PD1-7:

IgG4関連疾患症例からの発癌の検討

演者 平野 賢二(東京大学消化器内科)
共同演者 多田 稔(東京大学消化器内科), 小池 和彦(東京大学消化器内科)
抄録 【背景】IgG4関連疾患(IgG4RD)からの悪性腫瘍発生率については十分な検討がなされていないのが現状である.【対象と方法】当院ないし関連病院で経験したIgG4RD125例(男性100例,女性25例,平均発症年齢65歳,うちAIP非合併25例[20%])を対象とした.1)IgG4RD診断同時期に発生した悪性腫瘍の種類と頻度(IgG4RD発症前後6カ月未満を同時期とみなした),2)同時期発癌がなく,かつ6カ月以上の経過観察可能であった111症例(平均観察期間71か月)における悪性腫瘍(根治的治療を受けた癌の再発も含めた)の種類と頻度,発癌までの期間,ステロイド使用状況,3)発癌症例の性別,IgG4RD発症年齢,予後などについて検討した.【結果】発癌は全体で21例(17%)に認められた.1)同時期発癌は8例で認められ,癌の先行診断が6例,IgG4RDの先行診断が2例であった.癌の内訳は腎癌2例,胃癌2例,肺癌1例,食道癌1例,前立腺癌1例,膵癌と大腸癌の重複1例であった.肺癌症例は1年後に前立腺癌を発症した.2)経過観察111例中13例(12%)に発癌は認められ,内訳は肺癌5例,胆管癌,胃癌,膵癌,舌癌,悪性黒色腫,急性骨髄性白血病,肝癌(再発),大腸癌(再発)が各1例であった.IgG4RD発症から発癌までの平均観察期間は63カ月(12-186カ月,中央値は26カ月)であった.発癌時のステロイド使用状況は全経過無使用3例(3/17),中断例3例,維持療法中7例であった.なお,胃癌症例は75カ月後に膵癌を発症した.3)発癌症例21例の男女比は17:4,IgG4RD平均発症年齢69歳(非発癌症例は64歳,P=0.048)であった.癌の予後は癌死が7例,無再発生存が9例,腫瘍残存するも生存が5例であった.【結論】IgG4RD症例における発癌は一般人口よりは多いと考えられる.発癌はIgG4RDの罹患臓器に関係なくどの臓器にも起こりうるが,今回の検討では肺癌が多かった.
索引用語