セッション情報 パネルディスカッション1

消化器領域におけるIgG4関連疾患の診断と治療~包括的診断基準を受けて~

タイトル PD1-8:

EUS-FNAによる自己免疫性膵炎の診断能―IgG4関連疾患包括的診断基準と自己免疫性膵炎臨床診断基準2011を用いて―

演者 菅野 敦(東北大学消化器内科)
共同演者 下瀬川 徹(東北大学消化器内科)
抄録 (背景)2011年にIgG4関連疾患包括的診断基準(IgG4 RD CDC)が制定され,自己免疫性膵炎臨床診断基準(JPS2011DC)が改訂された.(目的)EUS-FNAで採取した膵組織を用いてIgG4 RD CDCとJPS2011DCによる自己免疫性膵炎(AIP)の診断能を検討すること.(対象)当科でEUS-FNAを施行しAIPと診断した36例(方法)(1)血清IgG4値(2)EUS-FNAで採取した組織における(a)組織の採取状況(b)IgG4陽性形質細胞数(c)IgG4/CD38陽性形質細胞比(d)storiform fibrosisの有無(e)閉塞性静脈炎(OP)の有無(3)(a)IgG4 RD CDCと(b)JPS2011DCを用いた診断能を検討した.(結果)(1)血清IgG4値の平均は463.7±405.9mg/dlでIgG4≧135mg/dlの症例は28例(77.8%)だった.(2)(a)10視野/HPF以上確保出来た症例は31例(86%)で,EUS-FNAでも十分な組織学的検討が可能だった.(b)IgG4陽性形質細胞数は10視野平均20.5±23.4個で≧10個/HPFの症例は19例(53%)だった.(c)CD38陽性形質細胞数は10視野平均63.7±34.9個だった.IgG免疫染色は不良のためCD38免疫染色を代用しIgG4/CD38を調べたところ平均29.22±24.5%でIgG4/CD38≧40%の症例は8例(22.2%)のみであった.(d)storiform fibrosisは31例(80%)の症例で認めた.(e)OPは11例の症例に認め,OP疑い症例は7例で,疑い症例まで含めると18例(50%)の症例でOPを認めた.(3)上記結果を元にIgG4 RD CDCを用いて対象症例を診断したところ,IgG4 RDと診断できた症例は6例(16.7%)のみであった.(b)JPS2011DCの組織学的診断項目を検討すると,3項目以上陽性の症例は18例(50%),2項目陽性11例(31%)であり,JPS2011DCを用いた診断能は,確診30例(83%),準確診0例,疑診3例(8%),診断不能3例(8%)であった.(まとめ)EUS-FNAによる組織診を加えてもIgG4 RD CDCを用いたAIPの感度は低かった.JPS2011DCを用いたAIP診断の感度は高く,膵臓におけるIgG4 RD CDCの位置づけを検討する必要がある.
索引用語