セッション情報 パネルディスカッション1

消化器領域におけるIgG4関連疾患の診断と治療~包括的診断基準を受けて~

タイトル PD1-11:

自己免疫性膵炎の消化管粘膜におけるIgG4陽性形質細胞浸潤についての検討

演者 桑田 剛(東京都立駒込病院消化器内科)
共同演者 小泉 浩一(東京都立駒込病院消化器内科), 神澤 輝実(東京都立駒込病院消化器内科)
抄録 背景:IgG4関連硬化性疾患は諸臓器にIgG4陽性形質細胞の密な浸潤を認め,線維化と閉塞性静脈炎を生じた臓器で臨床徴候を呈する全身性疾患であるが,消化管病変のIgG4陽性形質細胞浸潤ついては十分検討されていない.一方,自己免疫性膵炎(AIP)に伴わない潰瘍性大腸炎(UC)の大腸粘膜にIgG4陽性形質細胞浸潤を認めるとの報告が散見されている.目的:AIP患者における消化管粘膜,およびUCや他の大腸疾患における大腸粘膜でのIgG4陽性形質細胞浸潤,病理組織像を検討し,AIPの膵外病変としての消化管病変の有無およびIgG4陽性形質細胞浸潤の疾患特異性の有無を検討する.対象と方法:1)AIP(Asian diagnostic criteria)46例で切除標本や生検材料の胃,十二指腸,小腸,大腸粘膜のIgG4陽性形質細胞浸潤および病理組織像を検討した.IgG4陽性細胞数は強拡大1視野中のIgG4陽性細胞をカウントし,10≧/強拡大をIgG4-Present,10</強拡大をIgG4-Absentとした.2)過敏性腸症候群10例,虚血性腸炎10例,感染性腸炎6例,UC 43例についてもIgG4陽性形質細胞浸潤を同様に検討した.結果:1)AIP患者の消化管粘膜組織の検討では胃粘膜7/33,十二指腸粘膜1/28,回腸粘膜0/4,大腸粘膜3/10でIgG4-Presentであり,いずれも著しい線維化や閉塞性静脈炎は認めなかった.大腸粘膜IgG4-Present 3例のうち1例はUC合併例(AIP2型疑い例)であった.2)過敏性腸症候群0/10,虚血性腸炎0/10,感染性腸炎1/6,UC 13/43(30%)であった.UCでは他の大腸疾患に比較し大腸粘膜へのIgG4陽性形質細胞浸潤が有意に多く,また,IgG4-PresentのUCでは臨床的重症度および組織学的炎症所見が高かった.結論:AIP患者の胃や大腸粘膜においてIgG4陽性形質細胞浸潤例が少なからずみられるが,IgG4関連硬化性疾患としての病理組織像を欠き,これらはAIPの膵外病変として認知できない.UCの30%に多数のIgG4陽性形質細胞の浸潤を認め,これらの例ではUCの病勢が強かった.
索引用語