セッション情報 パネルディスカッション1

消化器領域におけるIgG4関連疾患の診断と治療~包括的診断基準を受けて~

タイトル PD1-12:

自己免疫性膵炎例におけるステロイド治療前後の脾容積変化

演者 松林 宏行(静岡県立静岡がんセンター内視鏡科)
共同演者 角嶋 直美(静岡県立静岡がんセンター内視鏡科), 小野 裕之(静岡県立静岡がんセンター内視鏡科)
抄録 【背景】慢性膵炎例の一部には脾静脈閉塞による左側門脈圧亢進症,脾腫が報告されているが,自己免疫性膵炎(AIP)例では検討が少なくステロイド治療による効果もわかっていない.【目的】AIPにおける脾腫の頻度,ステロイド治療前後の脾容積の変化とそれらに関与する因子を検討した.【方法】当院で診断したAIP46例(男:女=36:10,年齢:64.3歳)と年齢,性別を合わせたcontrol 92例とdisease control(肝硬変:LC)46例,reference群として慢性膵炎(CP)46例を対象とした.CT画像で脾容積,脾静脈(SpV)右端径,SpV高度狭窄(>70%径),脾周囲側副血行路を評価した.年齢,性別,血清IgG,IgG4値,肉眼型等の因子と脾容積や治療前後の脾容積比との関係をみた.各群のCT間隔には差がなかった.脾腫は>control群脾容積の平均+2SDとした.【成績】脾容積はAIP(149ml)がcontrol(97ml)やCP(108ml)より大きく(P<0.0001,0.0002),LC(222ml)より小さかった(P=0.003).脾腫(>173ml)はAIPの20%にみられた.SpV径はAIP(6.3mm)がcontrol(7.8mm)より細かった(P<0.0001).SpV高度狭窄と側副血行はAIP群で39%と28%にみられ,CP群(各8.7%)よりも高頻度であった(P<0.001,0.02).AIPでは年齢と性別で脾容積に差がみられたが(P<0.05),血清IgG,IgG4,肉眼型,SpV狭窄では有意差を認めなかった.しかし,治療後の脾容積比はAIPで84%であり,control(99%)やCP(99.9%)と比べて有意な縮小を認めた(P<0.0001).縮小レベルは脾腫例(66%)が非脾腫例(90%)より,びまん型(77%)が限局型(91%)より,SpV高度狭窄例(77%)が非高度狭窄例(91%)より大きかった(P=0.02,0.02,0.03). AIP例の側副血行はステロイド治療開始後に全例で改善傾向を認めた.【結論】AIP症例には20%の症例で脾腫や脾周囲側副血行路を認めた.ステロイド治療の効果はびまん性腫大や脾静脈閉塞を伴う脾腫合併例で高いため,これらの症例ではステロイド治療を検討すべきである.
索引用語