セッション情報 パネルディスカッション2-1

生活習慣と消化器疾患:肝・胆

タイトル PD2-1-3:

非アルコール性脂肪性肝疾患からの糖尿病発症におけるインスリン動態の関与

演者 荒瀬 康司(虎の門病院健康管理センター)
共同演者 川村 祐介(虎の門病院肝臓センター), 熊田 博光(虎の門病院肝臓センター)
抄録 目的:非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)からの糖尿病発症にインスリン動態が如何に関与するかにつき検討.
方法:対象はNAFLDと診断され,75gブドウ糖負荷試験(以下OGTT)にて非糖尿病であり,以後1年毎にOGTTを繰り返し行った605例.対象の内訳は年齢59.0±10.5歳,男性67%.OGTTでは,インスリン分泌指数として早期分泌指数(Insulinogenic index,IGI)と後期分泌指数(I/GAUC60-120),インスリン抵抗性として,Matsuda indexを算出.平均観察期間は7.4年で,糖尿病発症の頻度,その危険因子につき検討.危険因子としては観察開始時点での年齢,性,肥満度,高血圧,喫煙,AST,ALT,GGT,アルブミン,中性脂肪,コレステロール,血小板数に加え,フォローアップ中のインスリン動態値(三分位値)で検討.統計学的には,Kaplan-Meier法およびCox proportional hazard modelにて算出し,P<0.05で統計学的有意差ありとした.
結果:
1.糖尿病発生率:糖尿病発症は61例で,累積発生率は5年6.0%,10年13.2%.
2.糖尿病発症例でのインスリン動態の変化:観察開始時と糖尿病診断直前のインスリン動態では,IGIが0.53±0.38より0.37±0.21へ有意な低下がみられた.I/GAUC60-120(0.34±0.20より0.32±0.20)及びインスリン抵抗性(HOMA-IRでは2.34±1.31より2.28±1.18)は統計学的有意差を示さず.
3.糖尿病発症要因:糖尿病発症には,経過中のIGI・Matsuda Indexが重要であり,IGIの三分位値でのcut pointsは,lower,<0.56;middle,0.56-1.05;upper,≧1.06で,1ランク低下する毎に糖尿病発症のhazard ratio(HR)は3.03(P<0.001)であった.同様にMatsuda Indexの三分位値でのcut pointsは,lower,<3.68;middle,3.69-6.25;upper,≧6.25で,1ランク低下する毎にHRは1.58(P=0.024)であった.
結語:OGTTの繰り返し検査により,NAFLD症例では全身のインスリン抵抗性に,インスリン分泌低下が加わった際に糖尿病発症をきたすことが示唆された.
索引用語