セッション情報 パネルディスカッション2-1

生活習慣と消化器疾患:肝・胆

タイトル PD2-1-4[追加]:

最近の脂肪肝と糖尿病の増加について

演者 今村 也寸志(鹿児島厚生連病院内科)
共同演者 宇都 浩文(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学), 坪内 博仁(鹿児島大学消化器疾患・生活習慣病学)
抄録 【目的】脂肪肝は生活習慣病の危険因子であることが指摘されている.今回の研究では脂肪肝と糖尿病の関連について,人間ドック受診者を対象として横断あるいは縦断的解析を行ったので報告する.【方法】1991年から2011年度の5年ごとの人間ドック受診者を対象とした.脂肪肝の診断は腹部超音波検査で行った.【結果】2011年度受診者では男性(6882名)の13.3%,女性(4271名)の6.1%に糖尿病が見られた.糖尿病(+)群と(-)群では,脂肪肝の発生率は(+)群が有意に高い値であった(男性,56.1 vs 35.2%,P<0.001;女性,51.5 vs 19.0%,P<0.001).ロジスティック解析では,脂肪肝は糖尿病の独立した予測因子であり,そのオッズ比は男性1.97[1.66-2.32],女性では3.12[2.29-4.26]であった.2006年度に糖尿病が見られず,2011年度に再検査が可能であった4927名のうち266名に糖尿病が見られた.ロジスティック解析を行うと,脂肪肝は5年後の糖尿病発生を予測する独立した因子と考えられた(オッズ比は男性1.68[1.22-2.33],女性2.48[1.32-4.48]).1991年から2011年度の5年ごとの検討では,糖尿病は有意に増加していた(男性,6.0,8.9,10.0,10.8,12.0%,P for trend<0.001;女性,3.3,4.5,4.2,4.1,5.1%,P for trend=0.003)が,肥満は男性で微増(27.0,25.0,28.4,30.5,31.1%,P for trend<0.001)するものの,女性では有意に減少していた(23.4,25.2,22.6,21.1,20.5%,P for trend<0.001).脂肪肝は男女とも著しく増加していた(男性,10.8,26.3,33.8,36.7,38.0%,P for trend<0.001;女性,6.45,16.7,25.2,21.3,20.8%,P for trend<0.001).この糖尿病と脂肪肝の変化は,身体組成で補正しても有意な変化であった(Mantel-Haenszel test).【考察】脂肪肝は,肥満と独立した糖尿病の危険因子である.この脂肪肝と糖尿病の増加は,生活習慣病の新たな側面を表現していると思われる.
索引用語