セッション情報 パネルディスカッション2-1

生活習慣と消化器疾患:肝・胆

タイトル PD2-1-7:

喫煙による肝細胞オートファジー抑制と細胞障害

演者 山科 俊平(順天堂大学消化器内科)
共同演者 池嶋 健一(順天堂大学消化器内科), 渡辺 純夫(順天堂大学消化器内科)
抄録 【目的】生活習慣病の原因の一つである喫煙は,肝脂肪化,免疫細胞活性化,肝発癌に関与する可能性が報告されている.一方,蛋白代謝機構の一つであるオートファジーが変性蛋白や障害ミトコンドリア除去を介して細胞保護的に作用すること,慢性肝疾患や肝発癌発症にオートファジー機能障害が関与することが明らかとなってきた.今回,喫煙による肝細胞障害とオートファジー機能について検討を行った.【方法】C57BL6Jマウスより肝細胞を単離し,10-5Mニコチン,タバコ抽出液を添加し24時間後の細胞死をWST-1アッセイにて評価した.ニコチンやタバコ抽出液添加1時間後の細胞内GSHを測定し酸化ストレスの評価を行った.また添加3,6,12,24時間後に蛋白を抽出し,Western blot法にてLC-3,リン酸化mTOR発現変化を解析しオートファジー誘導を評価した.またp62発現によってオートファジー機能を評価した.RealtimePCRによって細胞内NQO1mRNA発現を評価した.【結果】単離肝細胞にタバコ抽出液を添加すると24時間後に細胞数は約56.6%に減少したが,ニコチン添加群では,細胞数の変化はなかった.タバコ抽出液添加によって細胞内GSHは有意に低下したが,ニコチン添加では明らかな変化を認めなかった.ニコチン,タバコ抽出液添加はどちらも肝細胞mTOR活性を誘導し,LC3-II発現を有意に低下させた.またp62蛋白やNQO1mRNAはニコチン添加群でもタバコ抽出液添加群でも有意に増加した.【結語】ニコチンやタバコ抽出液添加はmTOR活性化を介しオートファジー誘導を抑制したと考えられた.タバコ抽出液添加群では酸化ストレスとオートファジー抑制の両方が生じたため細胞死が誘導されたと推定された.オートファジー抑制によるp62蛋白蓄積はNrf2蛋白活性化やNQO1発現を介し肝発癌に関与することがわかっており,慢性的なタバコ暴露によるオートファジー抑制は肝発癌誘導に作用する可能性が示唆された.
索引用語