セッション情報 パネルディスカッション2-1

生活習慣と消化器疾患:肝・胆

タイトル PD2-1-8:

脂肪性肝障害における喫煙の影響

演者 児玉 和久(東京女子医科大学)
共同演者 徳重 克年(東京女子医科大学), 橋本 悦子(東京女子医科大学)
抄録 脂肪性肝障害は,肥満や飲酒の生活習慣によって引き起こされる肝障害だが,これらの病態におよぼす喫煙の影響は未だ明らかではない.今回喫煙がこれらの肝障害の進行や肝内・肝外発癌におよぼす影響に関して検討した.(対象と方法)1.肝生検で診断したNAFLD493例に関して喫煙の有無で2群(無311例,喫煙有のうち現在も喫煙群94例,過去の喫煙79例)に分け,肝生検所見(fibrosis 0-4,activity 0-3,steatosis 0-3),血液データに関して比較検討した.2.喫煙の肝細胞癌・肝外発癌に及ぼす影響を検討するために,肝生検で診断したNAFLD肝硬変72例,アルコール性(ALD)肝硬変85例に関して,肝細胞癌・肝外の発癌率を比較検討した.(結果)1.NAFLDにおける喫煙有無での比較;性差は喫煙有(男性73%),無(男性43%)で有意差を認め,平均年齢は有(51.8才),無(51.6才)と有意差を認めなかった.肝生検所見では,(fibrosis<平均値>有2.25/無2.31,activity有2.03/無2.00,steatosis 有2.35/無2.24)と有意差を認めなかった.肝機能検査値・血小板数は,γ-GTP(有137/無101)のみ有意差を認めたが,その他有意差を認めなかった.さらに,現在喫煙群と過去の喫煙群に有意差なく,ブリンクマン指数と肝生検所見,肝機能検査値に相関は認めなかった.2.NAFLD肝硬変では,喫煙の有無で5年肝細胞癌発癌率(喫煙有;8.3%,無;11.2%)は有意差を認めなかった.また肝外発癌は非喫煙例から1例子宮体癌の発癌を認めたのみで有意差を認めなかった.ALD肝硬変では,喫煙の有無で5年肝細胞癌発癌率(喫煙有;7.1%,無;17.1%)は有意差を認めなかった.肝外発癌に関しては,5年肝外発癌率(喫煙有;19.6%,無;0%,p=0.059)であり,喫煙者に肝外発癌が多い傾向を認めた.(結論)喫煙は,NAFLDの肝線維化進行および肝発癌に影響は少ないものと考えられた.一方,肝外発癌における飲酒と喫煙のsynergistic effectが示唆された.
索引用語