セッション情報 パネルディスカッション2-1

生活習慣と消化器疾患:肝・胆

タイトル PD2-1-9:

肥満患者における発癌についての検討

演者 遠藤 美月(大分大学医学部総合内科学第一)
共同演者 本田 浩一(大分大学医学部総合内科学第一), 清家 正隆(大分大学医学部総合内科学第一)
抄録 【目的】当科における肥満患者をretrospectiveに検討し,肝癌を含む悪性腫瘍の発症との関連について検討を行なった.【方法】対象は2000年から10年間に当科に入院したBMI30kg/m2以上の患者399人(男性192人,女性207人,平均年齢50.0±16.9歳 平均BMI35.0±7.8kg/m2).検討項目は,1.当科における肥満患者の背景およびfollow状況,2.現在まで当科で治療を継続している128人:肥満群(男性62人,女性66人,平均年齢48.6±17.0歳,平均BMI 36.5±8.8kg/m2)と,当科関連施設で2004年から追跡調査をしているBMI25未満の糖尿病患者284人:非肥満群(男性175人 女性109人,平均年齢64±8.0歳,平均BMI 21.8±2.1kg/m2)との発癌率の比較検討,3.発癌に寄与する因子の検討(年齢,性別,BMI,DMの有無,ALT,γGTP,PLT).【結果】1.403人の平均follow期間は37.2±37.6ヶ月で,10年間のfollow率は31.1%であった.BMI 40kg/m2以上の高度肥満患者が67例(16.8%),9例に外科的肥満治療が行われていた(平均BMI46.8 kg/m2).2.follow中の発癌は肥満群で14例(10.9%),非肥満群で14例(4.9%)であり,累積発癌率は肥満群で有意に高かった.3.肥満群の肝・消化器癌は9例であった(64.3%).発癌群と非発癌群では年齢に有意差を認めた.【考察】肥満はインスリン抵抗性を背景に,心血管イベント,悪性腫瘍の発症率が高いといわれている.当院の検討でも肥満患者に発癌率が高く,消化器癌が多数を占め,肥満管理に積極的に消化器医が関わる必要性が示唆された.さらに,脂肪性肝炎から肝硬変症と進展する症例もみられ,予防の観点から早期に肝臓専門医の介入が望まれるが,肥満患者のfollow率は非常に低く臨床上管理の問題点である.【結論】肥満患者の管理に,肝消化器専門医は積極的に参加し,循環器・糖尿病代謝などの専門医と連携し,心血管イベントと肝・消化器癌発症の予防を目指す必要がある.
索引用語